経済と人間の旅

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  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2014年11月1日発売)
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宇沢弘文 「経済と人間の旅」

自伝と著者の経済学的テーマを論じた本。ケインズ、ヴェブレンを中心に 経済学のエッセンスをわかりやすく説明している

著者の経済学的テーマを具現化したものは、社会的共通資本という考え方。特に制度を通じた医療と教育の効率的な分配に重点を置いている


著者は ヴェブレンの制度主義の立場にたち、リベラリズム(人間の尊厳を保ち市民的自由を守る)の観点から、社会的共通資本(特に医療と教育)を分配することを主張


少しエリート主義や 哲人政治的な思想を感じる。新しい制度をつくるほど、社会的共通資本が増え、政府や官僚の権限や責任も大きくなるが、そんなことして 大丈夫か?と思う


社会的共通資本とは
*人間の生活や生存に重要な資源、モノ、サービス、制度を共通の財産として社会的に管理する仕組み
*社会的共通資本の多くは希少資源であり、私有や私的管理は認められない

ヴェブレンの制度主義
*制度的諸条件により 経済活動の在り方が規定され、経済発展の形態と特質が決められるメカニズムを分析
*人々の経済活動(消費活動)は、効用最大化行動によるのではなく、社会的、制度的、歴史的要因に左右する

社会的共通資本としての医療は、医療を経済に合わせるのでなく、経済を医療に合わせる
*経済学の枠組のなかで最適なら国民医療費を計算することは不可能
*経済学のテーマは、最適な医療サービス効率的に分配されるには、どのような医療制度をつくるか

ケインズ「一般理論」
*資本主義は不安定であり、政府が何かしなければ、大量失業か危険なインフレを生む
*金融制度の不安定さが資本主義を不安定にしている
*一般理論の戦後の考察対象は 公共投資、対外経済、軍事援助などを通じた経済成長
*資本主義経済の制度的条件を定式化し、経済循環のメカニズムを解明し、雇用量、国民所得がいかに決定されるか明らかにした
*一般理論は資本主義の制度的条件のなかに大恐慌を生み出すメカニズムが内在することを明らかにした

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年2月2日
読了日 : 2021年2月2日
本棚登録日 : 2021年1月31日

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