「あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい。」
空気がきれいだということだけが取り柄の、ある田舎町で殺されたひとりの女の子。殺される前に、一緒に遊んでいた四人の女の子たちに、母親は言った。
その後、成長した女の子たちは、さまざまな事情から殺人を犯してしまう。これは、一緒にいたのに助けてあげられず、見たはずの犯人の顔を、警察に伝えられなかったことの贖罪なのだろうか。母親に言われた「納得できる償い」の形だったのだろうか。
四人の女の子たちは、それぞれが、この事件にとらわれながら成長していく。しかし、母親に言われたように犯人を探そうとするのでも、償いの形を探そうとするのでもない。私には、この母親の言葉自体はそれほど、四人の女の子たちのその後の人生の呪縛となるものではなかったように思えた。むしろ、この事件によって、もともと持っていた自身へのコンプレックスが顕在化され、それにとらわれていったように思った。リーダーとしてふるまうことしか取り柄がない自分とか、両親に大事にしてもらえない自分とか…。
この事件の贖罪は麻子自身と南条が背負うことになる。四人の女の子たちへの言葉は、ずっとエミリちゃんのことを忘れないでいてほしいという気持ちから出たものだったのだろうと思った。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説 日本
- 感想投稿日 : 2021年8月28日
- 読了日 : 2021年8月28日
- 本棚登録日 : 2021年8月28日
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