本巻で印象深いエピソードは、第十七話「在原業平、京にて塩焼きの宴を催す事」。
前巻の水脈探しのエピソード同様、市井の民と道真が関わる一話となっています。
いわば「下賤の者」に何が起ころうと、離れたところで手も差し延べない貴族どもに対して、道真は静かに罵ります。
「目の前の民一人のことも救おうとせず世が政がとは片腹痛い」
前巻を読んだ今だから思うのですが、これも道真の無力なる彼自身への怒りの表れなのでしょう。
読者としては、「頑張れ!」と声をかけるのもおこがましく、歯がゆくもただただ彼の苦悶と葛藤を見ていることしかできません。彼の行く末に幸あらんことを!
その他、都大路を闊歩する百鬼夜行や道真の師にして宣来子の父・島田忠臣の怪しい動きなど、前巻からの続きであった業平受難のエピソードも霞んでしまうほど、盛りだくさんの巻でありました。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
灰原薬
- 感想投稿日 : 2016年7月17日
- 読了日 : 2016年7月17日
- 本棚登録日 : 2016年7月17日
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