薬屋のひとりごと(1) (ビッグガンガンコミックス)

制作 : 七緒一綺  しのとうこ 
  • スクウェア・エニックス (2017年9月25日発売)
4.21
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本棚登録 : 4281
感想 : 118
5

齢十六で諦観しきった薬学オタクの地味っ子が、「好奇心猫を殺す」であれよあれよと策謀に巻き込まれていく様が実に楽しいですねぇ。

本屋で試し読みして面白かったので購入……って思ったら別の出版社の本だったというオチ。
まさかコミカライズ版が同じ原作で2社から出てたなんて知らなかったんだよ…orz
…買ってないのでどうのこうのは言えませんが、他社から出てる方が(おそらく)より原作に忠実。こちらの作品はより漫画らしくなり読みやすさを重視しているように思えます。
好みの問題ですが、漫画読みとしてはこちらの方が性に合う気がしました。

で。
大まかな話としては、薬屋の少女がなんだかんだで皇帝の後宮に下女として入ることになったわけですが、そこで持ち前の薬学の知識を武器に好奇心から色んなトラブルに首を突っ込んでは問題を解決していくという、ミステリー仕立てになっております。
あえて嫌な見方をすると、現代の薬学・医学知識(と同等の知識)を主人公に持たせ、知識が浸透していない舞台(閉鎖的な後宮)で無双させるという、最近の転生・異世界と同じ構図を持っているように思えます。
正直、その辺の「現代ではごく普通の事でヒーローになれる舞台設定を作る」展開はどうも性に合わないのですが…。
しかし、この作品はその辺のさじ加減が上手く出来ていて、「その時代レベルに見合う」知識と活用法にアレンジされており無双感は感じません。出来る事、出来ない事が違和感なく定められているあたり実に上手い。…もう一つ、あえて国名を名言・確定させていないので、あくまでも「それっぽいどこかの世界の国」というセーフティもありますね(笑

そういう設定的な面白さもあるのですが、何より主人公・猫猫(マオマオ)の可愛く無さが魅力的なので物語として非常に面白くなっています。…矛盾しているようですがまさにそうとしか言いようがなく(笑
彼女は環境とそして時代の背景から、かなり早熟でかつ頭が良く、「世の中はこういうものだ」と冷めた目で世界を斜め見ております。そしてふてぶてしさもあって可愛げというものがありません。
しかしながら、薬が絡むとオタク…というよりマッドサイエンティストの血が騒ぎ、暴走しがち。更に薬以外に興味がないかと思えば、お人好しだったり好奇心だったりで余計な事に首を突っ込んでしまう。
その結果、平穏無事にお勤めを済ませてしまいたいはずなのに、渦巻く人間模様に巻き込まれ、気が付けば後宮の中央あたりで「どうしてこうなった」。
巻き込まれ系ヒロインとしては大変すばらしい完成度です(笑

更に、ラブコメとして見れば相手役となるイケメン・壬氏のキャラ描写が素晴らしい。
容姿は当然、役人としての力量は高く、頭も切れる。腹黒なところも含め非の打ちどころがないヒーロー役です。…が。これを毛虫を見る目で相手にしないという猫猫。
この猫猫のクールさが良いのですが、更に自意識過剰(実際そうなんだけど)イケメンとしては、そういう目で見られる事に新鮮さを感じて好感度上げてしまうという…後宮は歪んでるなぁ(笑

その他の登場人物も皆魅力的。特に玉葉妃は王妃という設定もありますが、外見も美人さんで更に懐が深く、面白い事には興味津々というなかなか愉快な人。色々とイレギュラーな猫猫が活躍できるのは彼女あっての事なので欠かせざる人物ですねぇ。

そんなこんなでかなり面白い作品でした。
…困るのはラノベ原作なので完結まで何年かかるかってとこですよねぇ…。

あぁちなみに、猫猫は見た目が残念と自嘲しているけれども、それにしちゃ可愛すぎだと思いますよ?w

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2019年2月11日
読了日 : -
本棚登録日 : 2019年2月11日

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