硫黄島 栗林中将の最期 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋 (2010年7月20日発売)
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本棚登録 : 140
感想 : 19

硫黄島関連の本をまたしても読んでしまった。
本のタイトルにある、栗林中将の最後は本書の1篇でしかなく、他は硫黄島にまつわる独立した外伝ともいえる4編で構成されている。
いつもの綿密な取材と膨大な資料の読み込みに裏付けされた、80年前に何があったのかを多角的に掘り下げ、その全体像をあぶり出す内容で、改めて梯さんの仕事ぶりに感心する。
なかでもとりわけタブー視され忌避されているであろう、捕虜を殺して食べた事件に迫る「ドキュメント4、父島人肉事件の封印を解く」はショッキングだ。
戦意高揚のため敵を食ってやるくらいの気持ちでなければ勝てないという現場のリーダーとしての立場や信念もわからなくもない。グアムの軍事裁判での開き直った首謀者の態度はいかにも軍人らしく、嘘をつく部下や罪をなすりつける卑怯者もいる。戦争という極限状態に置かれた人間だから仕方ないと割り切ることなどできず、今も昔も会社や組織内で、立場やパワーバランスと私的な感情が絡み合う中で、人がどう振る舞い、どう行動するかが当時と全く変わっていないと感じる箇所が多々あり、少々恐ろしくなる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年7月2日
読了日 : 2023年7月2日
本棚登録日 : 2023年6月17日

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