【読書その97】以前読んだ「スミスの本棚」で、アートディレクターの佐藤可士和氏がお薦めしていた本。この本は本当に面白かった。非常にお薦めの本。この本の特徴は著者がUSATODAYのコラムリストをやっていたこともあり、具体的な事例が抱負である。
この本を一番の主張は、成功を目指すには、中途半端ではダメであり、①上質と②手軽の2つを選び、それを追求することである。
上質とは、経験とオーラと個性で表現される。最高の経験、つまりこれ以上ない快適で心にしみいる経験をもたらすものである。具体的にはiPhoneが代表例。また、グッチやティファニーなどの高級ブランドもそうだ。
手軽とは、簡単に手に入るという意味である。それは主に価格が安いことにより得られる。
著者のわかりやすい説明としては以下のものがある。「上質とは愛されることであり、手軽とは必要とされることである」。
同時に達成しようと欲張るとそれは「不毛地帯」に陥るという。どっちつかずの中途半端な商品やサービスしか提供できないものである。不毛地帯の例としてスタバがあげれている。スタバは上質なコーヒーを提供するお洒落なお店として成功したが、その後、さらなる成功を目指し、店舗を拡大しすぎて、普通のコーヒーショップになった。これはまさに上質さにさらに手軽さを加えようとした例である。また、ロック界のスターであるオジー・オズボーンが著名なヘビメタバンドが参加するツアー・フェスティバル「オズフェスト」を、コンサートチケットの高騰を理由に無料化し、失敗したという面白い事例も紹介されている。
ここで注目されるのはアップルである。本著でも指摘をしているが、一斉を風靡し「上質」の代名詞であったiPodも現在では話題になることもなく、手軽なものになった。それにわかるように「iPhone」が現在「上質」の代名詞となっている。しかし、国内をみても、これまで独占をしていたソフトバンクに続き、auが参入し、今度はさらにdocomoが参入を検討しているという。現在では実質ゼロ円でiPhoneを入手できる状況にどのキャリアでも入手できるようになる。iPhoneは手軽へ移行し、これまでの上質さを確保できなくなるのではないか。本著では、iPhoneの流通を絞り、極上のモバイル機器の座を死守するため、研究開発に資金を投じ、価格を高めに保つことにより、ファンをしびれさせるオーラを個性を保つことを指摘している。とはいえ、いつも世を何度も驚かせてきたアップル。スティーブジョブズが死去した今、新しい体制下のアップルがどのような戦略をとっていくか注目したい。
- 感想投稿日 : 2011年12月8日
- 読了日 : 2011年12月8日
- 本棚登録日 : 2011年12月8日
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