悲惨すぎる家なき子の死

著者 :
  • 河出書房新社 (2012年4月12日発売)
3.67
  • (3)
  • (14)
  • (5)
  • (0)
  • (2)
本棚登録 : 97
感想 : 5
5

日本文学界の異端児、平成のジャパニーズ・ポップ・ボッタクリ、アヴァンギャルド界の村上春樹、中原昌也の4年ぶりの短編小説集。
いやあ、見事に騙された。これは小説じゃありません。強いて言うなら愚痴。スタイル的には『あらゆる場所に花束が』を踏襲しています。共通の世界があり、場所があり、登場人物は違えど似たような事件が起こり、無意味な殺戮が繰り返され、その合間に著者らしき人間のグチが延々と続くという特殊な作風。『あらゆる場所に』と違うのはこれは短編集であり、然るべき区切りとタイトルが付けられているくらい。
きっと読者は無意識のうちに騙されることを望んでいるんだろう。そうとしか思えない。アマゾンかどっかの本書の紹介に「全部詐欺師の小説」と書いてあったがまさしく詐欺師。この読書体験は他では得難い。だって詐欺師なんだもん、と言ってしまえばすべて説明がつく。合法的なボッタクリにあえて、わかってて引っかからせるという(たぶんこの戦法は意図的ではない。)ことをやってのけている。それは中原昌也本人の力量がなせるわざである。じゃなければなんでグチだらけの本に金を出すんだ?それは読みたいからだ。読ませるのだ。
内容に関しては言うまでもないだろう。いつもと同じ殺戮、暴力、暴言、血だらけの絨毯、鴉、公衆便所、冷えた肉まん、老人。心が寒くなるような描写が多い。これはお家芸だ。最新作『こんにちはレモンちゃん』ではより顕著になっているので、気になる方は読んでいただくとさらに中原昌也の「現在」がわかる。2000円以上するけどね・・・。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年6月25日
読了日 : 2014年6月25日
本棚登録日 : 2014年6月25日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする