ローマの哲人 セネカの言葉

著者 :
  • 岩波書店 (2003年9月27日発売)
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本棚登録 : 82
感想 : 11
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タグ付けするなら、ジェネレーションギャップを痛切に感じるセネカファンブック。

セネカ、ストア派を代表する哲学者ですが、日本語訳されている本が少ないことでも有名です。いや、無名ですね。何しろ本が出ていません。
著者中野孝次さんが、言うように、本屋の本棚で手にはいるのは岩波文庫から出されいる二冊だけでしょう。
この本も、本当に偶然出会った一冊なのです。私の行きつけであるBOOKOFF塩尻店、
その哲学コーナーで偶然目にしました。値段もみずにそのままレジへ、ほとんど値下がりしていなかったハードカバー本を買ったわけです。

内容は、岩波文庫とは違い、多数の文献から著者が心を打たれた一文を引用し、解説する。いわばガイドブックでした。
確かにセネカの著作は膨大です。ハードカバーといえども、一冊ではカバーできません。日本語ではすべてを読めないからせめてその上澄みだけでも、、、と願った初学者の私にとってはちょうどいい難しさでした。

有名な、命の短さについてや、幸福な人生についての他、私が未読の書簡についても触れています。

セネカのストア哲学に一貫性があることが、多種の本で同じ内容を繰り返していることからも感じ取れました。

運命には与しない。
死を忘れず、今を自分のために生きる。
不幸は全て起きると思っておけば怖くない。

なんて、表向きは、後ろ向きな言い回しでしょうか。ネガティブに読み取れることか。それでいて、ここまでハシゴをおろしてもらったら、自信のかけらもない、読み手も一歩踏み出せるかもしれない。そんな優しさにも感じます。

生まれも出自も、お財布の中身も関係ないところに、幸せはある。
こんなセネカの知恵をもっと自分の生活に取り込みたいものです。
いつから?セネカ風にいうなら今からです。



あと、最後にちょっと苦言を、、、
とても良い一冊なのですが、著者の『今時の若いもんはみんなダメ、セネカ見習え!』発言が数ページごとに登場するのは辟易しました。
若者に読ませたいのに、当人たちにそんなにお説教したら、誰もついてこないのではないかな、と思ってしまいました。
引用文が素晴らしいだけに、追随する解説文から『トンデモ本』認定されないか、心配です。
その言い回しが気になる方はぜひご一読を。兼好法師が徒然草で吐き出す愚痴だと思えば、これも一興です。







読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2021年5月16日
読了日 : 2021年5月16日
本棚登録日 : 2021年5月9日

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