カテリーナの旅支度 イタリア 二十の追想 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2016年5月20日発売)
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本棚登録 : 154
感想 : 13
3


イタリアが大好きなので一度は内田洋子さんの本を読みたいと前々から思っていた

イタリアがギュッと詰まった20篇のエッセイ(後ほど訂正を入れますが、とりあえず)

第一印象としては、とにかく友人の多さに驚く
詳しいことがわからないのが残念であるが、仕事を通じて、人を介して、また住んでいるご近所さん…など本当に人の出会いが多い
(恐らく人の懐にスルッと入る能力の高い方なのであろう)
出会いの多さ、こういう部分は日本になかなかなく残念に思う
知らない人と話すことがますます少なくなった
昔はそこまででもなかったと思うのだが…(たま~に見知らぬおばちゃんとお話しするけど…)
世の中が、キャッチセールスに警戒するようになり、スマートフォンの普及で街で道を聞く必要性もなくなった
皆スマホに夢中で周りを見るゆとりもない
誰もが自分の世界の中にいる
(人見知りなので結局自分から率先して話しかけるようなことがないにしても)寂しい時代になったと感じるこの頃…

さてこちらの本、彼女の素敵なところは、個性あふれる様々な境遇のイタリア人である友人をあるがまま受け入れているところだ
好き嫌いだけでなく、その人の良いところ悪いところも批判せず丸ごと受け入れている
人だけでなく、イタリアという国自体の良いところ悪いところも、そいういうものだから…という感じだ
達観していらっしゃって、潔くてカッコいいし、素晴らしい
自分が全くそのような境地に立てないのでうらやましいのである
ついつい人間関係が面倒になり、別に無理してまで付き合わなくても…と思ってしまう
あるがまま受け入れるって愛情深い方なんだなぁ(自分にはまだまだ愛が足りないのである)
そのため、人や物事に対して結論を出すという書き方は一切なく、こちらの考え方や思いを逆に掻き立てる
イタリアの空気感を味わいながらも、決してお気軽エッセイではない
大げさに言えば、「人」や「人生」にフォーカスが当たっているため、考えさせられることが多かった
先に、イタリアがギュッと詰まった…と書いたが、書いておきながら途中で違うと感じる
彼女の周りの人たちのことを彼女の考えを添えて書いたものの舞台がイタリアなだけ…であった
もちろんミラノを中心に街のふとした表情や、温度を感じる場面、イタリアらしさ、大好きなイタリアの食事風景などもあって、それはそれで楽しめたけど

思っているエッセイとは違ったのだが、各友人たちの人生を通して、何か心を揺さぶられるものがあった

通り過ぎそうな風景を一度立ち止まってみる…
そんな風に人との関係を考えさせられるエッセイであった


余談
この本の中で、木造の古式帆船に住む描写がある
この船は長年放置されており、お払い箱寸前のところを内田さんが中古車1台の値段にならない程で縁あって買い取ったらしい
修繕に1年以上の月日が費やされる
全長15メートル、幅4メートルを超える船で、羅針盤までをも含むすべての部品が木製とのこと
元々売り物ではなく、船職人が最後の仕事として、自分のために自分が思う通りの船を最後の集大成として作った船である
どれほど丁寧で精巧で素敵なのか…
想像が膨らんでクラクラする
ロマンがあり過ぎる!
船に興味があるわけでもないのだが、この船のことが忘れられなくなってしまった(見てもいないくせに)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年9月18日
読了日 : 2020年9月18日
本棚登録日 : 2020年9月18日

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