登山、キャンプ…ともによく行くのでどちらかというと自然にはよく触れている
しかしながら、木をきちんと観察(?)したことあるだろうか…?
自然の背景として、当たり前の景色として目に移ってしまっていた
木の種類もほとんど知識がない
こちらを読んだら、まずは「木」さん、今までごめんなさい…となる
Amazonの紹介にある通り、ドイツで長年森林管理をしてきた著者のノンフィクション、驚くべき樹木の生態を知ることができる
■木は助け合って生きている
どうやって?
それは「根を通じて」だ
根が直接繋がったり菌糸が栄養の交換を手伝う
糖液を譲り合うのだ
生態系を作り出し自分たちが棲みやすい環境を整えるために
(木も人と同じで一人でできることは限られる)
■木のコミュニケーション
自分を表現する手段として芳香物質がある
(人で言うところのフェロモンみたいな感じであろうか)
こんな実例があげられている
アフリカサバンナのキリンは、アカシアの葉を食べる
もちろん木は食べられたくない
そこでキリンを追い払うために葉の中に有害物質を集める
毒に気づいたキリンは別の木に移動する
しかし驚くのはまだ早い!
最初に葉を食べられたアカシアは、まわりの仲間に災害が近づいていることを警報ガス(エチレン)を発散し、香りのメッセージで仲間に知らせるのだ!
他にも、自分を脅かす害虫に対してどう抵抗するかというと…
まず木はこの害虫の種類が唾液の成分でわかるらしい(ってことは味覚みたいなものがあるのだろうか?)
そこで木は自己防衛のため、この害虫の天敵の好きなにおいを発散することもできる
(花ではなく木が!である…驚いた)
他にも香りではない自己防衛として、「ナラ」は苦くて毒性のあるタンニンを樹皮と葉に送り込むことができるため、美味しかった葉がまずくなり害虫は逃げ出す
メッセージの伝達は香り以外に、電気信号も使うらしい
菌類があいだに入っているため、菌糸がインターネットの光ファイバーのような役目をし、地中を走り、森全体を網羅している
菌糸のケーブルを使って情報が伝達されるのだ
(ワールドワイドウェブならぬ、ウッドワイドウェブというしゃれた言い回しが業界内であるそう)
■木はゆっくり生長する
親が子の成長の教育として、光を遮る(立派な親の下に子がいるため)
樹齢200歳の親の下に80歳の子供が居る
まだ200年は独立できない
ただし野生の樹木の話だ
ゆっくり生長することで、内部の細胞がとても、細かく、空気をほとんど含まない
柔軟性が高く、嵐が来ても折れにくい
抵抗力も強く長生きできる
(辛抱強くゆっくり生長していくことが結果的に立派な樹木として生き残るコツだ 子供が焦ってしまわぬよう、うまくできている)
■木製のエアコン
樹木が自分たちの力で生活環境を変える力がある
定期的な間伐がなされる針葉樹林と古いブナの原生林の気温差は10度もある!
生きている木と朽ちた木質の総量が多いほど土壌の腐植土の層が厚くなり、より多くの水分が蓄えられる
その水分が蒸発することで温度が下がる
(人が汗をかいて体温調節するのと同じだ)
■ストリートチルドレン
公園などに植樹された樹木は、幼少期に故郷を離れ、両親なしで一人で生きていくことになる
サポートしてくれる保護者や、助け合う友だちもいない(ううっ泣ける)
おまけに、公園の土壌は森林の豊かな土壌とは異なり、硬くて痩せている
当然、樹木の生長に全く適さない
人間が近づいて根元の土を踏むため、ますます踏み固められてしまう
しかし光は一人占めできるため、世間知らずの若木はどんどん生長する
だがこれは正しい成長ではない
結果的に根が育っていないため不安定になる
ほかにも人の手で刈り込まれたり、切り落とされたりし、そこから菌類の侵入が始まる
公園だけでなく、街の街路樹もおなじだ
森とは違う街の熱放射、汚染物質を含む空気、欲しくもない肥料、凍結防止剤、犬のおしっこ…
これがストリートチルドレンの長く生きられないかわいそうな運命だ
当然ストレスのかかった木は森の木とは違い、私達に綺麗な空気を与えてはくれない
(間違った森林浴をしていることがあるということだ)
他にも実に興味深い樹木の生態が盛りだくさんだ
樹木の凄さを改めて知った
うっすら凄い奴だろうとは思っていたが…
そんなもんじゃあなかった(失礼しました)
深い深い!
一番驚いたのは植林した木と自生した原生林との違いがこれほどなんだ…と
一見美しく見える公園など、木にとっては不幸な場所なんだなぁ
そう考えると人間の欲望の犠牲になった不幸な樹木たちがたくさんいる
木は菌類、昆虫、動物、人間の支えとなっている
いやもっと言えばこの地球を支える大きな大きな存在だ
私たちはもっと大切にしなくてはいけない
そして樹木に対する知識が増えると、何気ない風景がとても感慨深くなる
公園にいるこの木は今何を感じているのか
山で見かけたこの大木は一体何年前からここに存在するのだろうか
山で見る崩壊された樹木たち…もしかしたら他の木の助けによってまだ生きていて回復しようとしているのではないだろか
見る目がすっかり変わりそうだ(自然がますます好きになるな、こりゃ)
この本は樹木を愛する著者のエッセイのような形で読めるため、親しみやすくとても読みやすい
難しい学術的なことはまったくないので、気軽に手に取ってくれる人が増えるといいなぁ…と願いをこめて
- 感想投稿日 : 2020年10月29日
- 読了日 : 2020年10月29日
- 本棚登録日 : 2020年10月29日
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