旅をする木 (文春文庫 ほ 8-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (1999年3月10日発売)
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感想 : 636
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自然の優しさと厳しさをこの上なく感じる作品…
著者星野さんのお人柄も同じなのだろう
あまりにも自然の中に溶け込み、ありのまますべてを受入れ、そして逆らいはしないものの、流されているわけではない
彼の人生は彼の意志であると同時に自然の、宇宙の成り立ちのひとつに感じる

そして彼の生きているアラスカでは、地位も立場も、財産も、着ている服さえも
まったく意味なんかもたないのだ
そう丸裸の人間力だけで人と付き合うのだ
素晴らしいことではあるが、果たして自分にできるのだろうか…
当たり前でありながら、不安を感じてしまう自分にちっぽけさと無力さと一体どんな上っ面の鎧を着けているのだ私は…
そんなことを感じてしまう

星野さんが最初に海外を訪れたのはなんと1986年、16歳の時
しかもブラジルへ向かう移民の船で2週間かけてロサンゼルスへ到着
もちろん一人
当時のアメリカの治安を考えてもご両親もよく承諾されたと感心してしまう
凄いなぁ
ヤマザキマリさんといい、星野さんといい…

そして初めてのアラスカへ行くエピソードも凄い
アラスカの出合いは一冊のアラスカの写真集
北極圏のあるエスキモーの村を空から撮った写真
ここからの行動力が尋常ではない…
「あなたの村の写真を本で見ました。
たずねてみたいと思っています
何でもしますので、誰か僕を世話してくれる人がいないでしょうか」
と手紙を出しちゃうのだ!
そして、とうとう19歳の夏、願いが叶う
滞在期間3ヶ月間、強烈な体験として心の中に沈殿していったという

そして各エピソードがいちいち素敵過ぎた
心暖まるたくさんのエピソード
素敵な人が自然と集まるのは星野さんが真摯に人生に向き合っているからなのだろう
引き寄せの術…ですね
そして、自然の厳しさの中命を落としていった大切な人たち…
何度もこみ上げるものがあった
それでも星野さんは受入れて大地に足をつけ、生きていくのだ

心が洗われます
久しぶりに日常の垢が落ち、浄化された



カリブー=トナカイ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年6月27日
読了日 : 2023年6月27日
本棚登録日 : 2023年6月27日

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