銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

  • 草思社 (2000年10月2日発売)
4.02
  • (414)
  • (356)
  • (302)
  • (29)
  • (9)
本棚登録 : 3864
感想 : 387
5

今日の世界情勢を形作る要因となった人類の歴史を紐解き、なぜユーラシア大陸における農業や工業が早期に発展し、他の大陸ではそれが起きなかったのかを解明した一冊。(上下2冊)

著者の分析では、人類発展の歴史が狩猟採集民族から始まった点は全ての大陸で共通している一方、ユーラシア大陸の肥沃三日月地帯に栽培可能な植物と家畜化可能な動物が数多く存在していたことにより、人類の定住化がいち早く可能になり、さらにはユーラシア大陸が東西に長い形状だったことにより、それらの農作物や家畜が同様の気候を持つ他の地域に容易に伝播したことが、同大陸における人口密度の拡大とそれに伴う文字や技術の発達、伝染病に対する集団免疫の獲得に繋がり、結果として他の大陸を侵略するための競争優位に繋がったという。

今日の欧米諸国の政治や経済、文化が支配的な世界においては、ともすればヨーロッパ人種の生物学的優位性といった概念が人々の間で無意識に浸透し、それが差別的言動に繋がる場合もあるが、著者の主張は人種間に能力や資質の違いはなく、今日の地域間の発展の不平等は、単に地理的偶然性がもたらした結果に過ぎないことを明確に示してくれる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2020年5月31日
読了日 : 2020年5月31日
本棚登録日 : 2020年5月31日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする