彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社 (2015年10月20日発売)
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本棚登録 : 2802
感想 : 243
5

「赤い魔法を知っているか?」

全てのカギは、この言葉が握っているのかもしれない。

舞台は、人工細胞で作られた生命体「ウォーカロン」が普及した未来。
この世界の「人間」は肉体の大部分を人工細胞に置き換えて半永久的な命を得ており、名目上は別存在とされているものの、実の所「ウォーカロン」との違いはほとんどない。
主人公であるハギリは現在「ウォーカロン」と「人間」を識別するための研究を行っているのだが、何者かに命を狙われることとなる。
政府関係者の女性・ウグイに守られながら犯人を探るうち、ハギリは
「人間とは何か?今、ウォーカロンと分ける必要は本当にあるのか?」
という問いに直面することとなる。
そんなハギリを見透かすように、一度きりしか読めない不思議な童話や謎の美女が現れて…。

ミステリとSFが出会うとこんなに面白いのか!
というのが、読後の素直な感想。
SFとしてしっかりとした環境設定がなされているし(人間のだめになった器官が人工細胞の移植技術で取り替え可能になるあたりなんて、いかにも現実になりそう)、犯人を推察する、ミステリならではの楽しさも味わえる。
これは、とんでもなく私好みの面白いシリーズが始まったぞ…

今回の犯人の目的は、「あ、そっち…」とちょっと拍子抜けしてしまうもの(もっとも、私はそういうオチが嫌いでない。むしろハギリがかわいく思えたくらいだ)だったが、あちこちに散らばった伏線は、このシリーズ全体の「謎」につながるものなんだろう。
間違いなく、あの謎の美女と「赤い魔法を知っている?」は関係してくるはず…!
(マガタ博士はアシモフ回路のようなものをウォーカロンに組み込んでいて、「赤い魔法を知っている?」はそのキーなのではないか、なんて予想を立ててみていたり…でも、そうするとハギリが識別システムを組むまでもなく識別できちゃうことになるなぁ…)
そう思えば、今から次作が待ち遠しくて仕方ない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学・評論
感想投稿日 : 2015年10月23日
読了日 : 2015年10月22日
本棚登録日 : 2015年10月22日

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