建築家長谷川豪氏初の単著書。
作品集ではなく、書き下ろしのテキストと写真で構成されている。
まず、タイトルがよい。とくに、考えること、生きることがよい。
これまでこんなことを謳った建築家はあまりなかったように思う。
考えることは、建築家なら当然やっているだろうし(建築することはもっとあたりまえだが)
生きることも、当然人間ならあたりまえだからだ。わざわざ本のタイトルにはしない。
もっと自身の作風を明快に現そうとする言葉や、大義名分的なタイトルがつけられることが多いだろう。
これは、3.11以降、みなが感じていると思うけれど、あたりまえの幸せのありがたさの実感、が少しは影響しているだろうけれど、それだけではない。氏はもともとあざといことはせず、また言葉と作品のずれもすくない。
氏の作品はいつもさわやかで、直球で、でも新鮮で、ハッとする驚きがある。
そのような作品をつくるエッセンスは、氏の、スタディ模型の膨大さによるものだけでなく、スタディする以前の『考えること』が重要であったことが本書を読むと分かる。おそらく、スタディ模型よろしく、膨大な量を『考えている』に違いないのだ。
氏はまえがきで、
僕は考えることが好きだ。
と告白し、またまえがきの最後には、
・・・そうした格闘そのもの建築なのではないかと思う。考えること、建築すること、生きること、を地続きに思考するとは、たとえば、そういうことを意味している。
という。
だから、まず『考えること』である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
建築
- 感想投稿日 : 2012年1月5日
- 読了日 : 2012年1月4日
- 本棚登録日 : 2012年1月4日
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