原発はいらない (幻冬舎ルネッサンス新書 こ-3-①)

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  • 幻冬舎ルネッサンス (2011年7月16日発売)
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題名の通り、事故があろうとなかろうと、電力が足りようと足りなかろうと、原発はすぐさま全廃しなければならないと、強く訴えた本です。

折り込みには、「原発問題に端を発し、人間の存在意義まで言及した『小出哲学』の集大成」などと書かれていたが、以前の『原発のウソ』に比べて、主観が少し盛り込まれてきたな、と感じました。ただ、「集大成」とまではいかない。
しっかり、原発の広範囲かつ専門的な研究と、市民からの質問にも答えています。

著者の小出さんは、著書を見る限り、産業革命以後の急速な人類の繁栄発展に対していささか批判的でもあり、また人類と他の生物や地球との関係というものに対しても一定の姿勢を持っておられるようです。
また、37年間の「助手」ぐらしについても、特に何とも思ってはいなかったようです。

なぜ、原発をすべて撤廃しなければならないのか。
原発推進派の理論についても反駁しています。

安全な原発などなく、すべての原発は危険である、ということ。
原発はクリーンなエネルギーなどではなく、建設においてもコストがかかるし、実は二酸化炭素も多く放出している。(同時に、二酸化炭素は温暖化の原因でもないと言及していますが。)
一番の問題は、核融合の後にできる「死の灰」放射性廃棄物の処理の問題。
最悪の物質、ストロンチウム、プルトニウム。
利権を守るために、事故の内容をコロコロと変え、誤った内容を流し続ける東電と政府。「国民を混乱に陥れないため」というが、本当は、正しい情報を入手して動くことがパニックを避ける方法なのだという。
現在の大きな問題は、福島原発の大量の放射線汚染水の行方。

また、多くの国民が心配しているであろう「被曝量」は、100ミリシーベルト以下で「健康被害なし」とされているが、これも嘘で、実は安全な被曝量など存在しないということ。「どこからが安全でどこからが危険」という基準はない。

また、原発をすべて止めても、電力には何の影響もないということ。稼働していない火力発電が多くあり、むしろ日本の発電所は多いということ。
私も、「新しいエネルギー」に期待していたのだが、実用化にはまだまだ時間がかかり、風力、太陽光も環境に悪い。下手するとまた原子力必要派が出てくるから、当面は火力で補うべきだという。

政府が原子力にこだわる理由は、将来的に核兵器を製造しようとする下心があるためでもある。
また、独占企業や大企業は原発を作るほど儲かる仕組みになっており簡単にその利権を手放せない。
しかし、それらの理由は論外である。

少し、すべてにおいて「最悪の事態」をあおる研究者だなとも感じましたが、実際に、「最悪の事態」が起きてしまったので、そこまで考える必要もあると思います。

小出助教の歴史は、「敗北の歴史」であったという。決定的だったのが福島第一原発であるという。「あなたは悪くないよ」と言いたい。
しかし、その信念に少なからず心動かされたし、また研究から「原子力などなくても大丈夫」だという結論にも納得はしている。

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カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2013年7月25日
本棚登録日 : 2013年7月25日

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