大半の憲法学者がガラパゴスな考え方を強要している現状を踏まえた上で、筆者は国際法の視点からそういった憲法学者を一人ずつ狂ったように批判する本。
この点、従来の憲法学者が自身の思想・信条ありきの学説を作り、それを通説としているのではないかと思うところに、メスを入れて批判するのはとても納得ができる。
日本国憲法の制定過程を追っていくと、憲法は、日米が共同で執筆した、20世紀の国際法規をただ真似しただけのコピペの最高法規にすぎない。そのため、憲法の条文解釈は国際法の条文を解釈するに近いことを行えばいいと筆者は考える。
その一方で、反米思想の影響を受ける大半の憲法学者は、19世紀のドイツ国法学に回帰した思想の下で、国際法学とは真っ向から対立する“独自の憲法学”を形成させた。その証拠に、憲法学者は、「八月革命説」を提起し、現行憲法をアメリカの押し付け憲法とは考えずに日本国民が敗戦によって天皇から主権を奪い取った(革命)ことによって作られた民定憲法と考える。この箇所を筆者は猛烈に批判している。
しかし、穿った見方をしてしまうと、これだけ筋が通ってる(ように思える?)と少し怪しさも感じられる。
例えば、「自衛権」の解釈について、憲法学と国際法学の見解をそれぞれ提示しているが、果たして国際法学の見方が筆者の提示する考えが通説なのか?他の有力説もあるのではないか?などが疑問に思えた。筆者の憲法学者憎しの考えは十分理解できるけれど、もう少しフェアな見方で検討すべきところがあるのではないかと感じた。
また、全ての憲法学者が狂人なわけではないことはいえるので、この点は忘れてはいけないことだと思う。きちんと中立な立場から論じられる学者はいる(京大系)が、圧倒的多数派(東大系)の批判に晒されてしまうことから声を上げないだけだと思う。
しかし、それにしても、憲法学者の中に蔓延る歪な風潮(異なる意見を認めない風潮)は治すべきだと思う。某教授の「たいていの憲法学者が憲法違反と言ってますし、国民の間でもそのことが理解され、『憲法違反だと思う』というような回答が世論調査で多数を占める状況になっています。したがって、法案が憲法違反であるという点は決着がつきました」という発言は恐ろしい。
- 感想投稿日 : 2023年1月3日
- 読了日 : 2023年1月12日
- 本棚登録日 : 2022年10月30日
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