昭和32年に刊行された作品、ということを知った上で読まないと、なかなかに疑問の沸く部分はあるけれど、探偵役の兄妹の活躍が心地よくて、シリーズで読みたいなぁと思わせる作品でした。
新装版はとても可愛らしい装丁で、女流作家なのもあって文体も柔らかく、それでも江戸川乱歩賞だしなぁという心持ちで読めば、やはりそこは素人探偵といえどコージーミステリとは言えない、それなりの殺人事件が起こります。
それなりの殺人ってなんだって話ですが。
時代背景をイメージしつつ読めると、受け入れやすいかもしれません。
丸く赤いポストだとか。電信柱、という方がしっくり来るような、木製のそれとか。扉を閉めた時に、嵌め込んだガラスが振動でがしゃんと音の立つような古い個人病院だとか、レトロで今は可愛いと人気の赤や黄色、橙の花柄のグラスだとか。
…全部わたしのイメージですけど。しかも別にそんな表現は、作中に出てきません。なんとなくそんな感じかな、っていうだけです。
すみません。大半が本の感想じゃないですね。
作品に戻りましょう。
登場人物が、表で欲しいほどに出てきます。主人公兄妹と、その2人が下宿でお世話になる、少し複雑なお医者さん一家。核家族に加えおばあちゃんや姪っ子、看護婦さんに患者さん。と、猫。
連続殺人となりますので、わたしなどは一旦家系図を書きました。
ボリュームも、容疑者人数も、ちょうど良かったです。初めて読みましたが、とても読みやすかった。
こちらを処女作に、たくさん作品を残された方ですので(しかも作者さまは殆ど学校教育を受けていらっしゃらないそうです)、ぜひ、他の作品も読みたいなと思う一冊でした。
- 感想投稿日 : 2023年2月28日
- 読了日 : 2023年2月28日
- 本棚登録日 : 2023年2月23日
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