夫の墓には入りません (中公文庫 か 86-2)

著者 :
  • 中央公論新社 (2019年1月22日発売)
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感想 : 178
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妻ではなく、夫に先立たれた“嫁”の苦悩をつづった小説。
リアルだからこそ、イライラしてしまうかも?!

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夫が脳溢血で、突然この世を去った。
46歳の若さだった。

でも妻・夏葉子(かよこ)には何の感情も湧いてこない。
仕事人間の夫は、家にいることなどほとんどなかった。

独身の身となったはずの夏葉子だったが、夫の両親やその周囲からは“嫁”としての役割をじわじわと強要されはじめる…

そして現れる夫の同級生だったという謎のオンナ。
亡き夫への疑惑も高まっていき…

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嫁としてのグチだらけなのに、文章が自然で読みやすく、サラッと読み終えられました。
ただ、読むタイミングによっては、ストレス倍増の小説でもあるので、心に少し余裕がある時に読むことをオススメします。

どの立場で読むかによって、登場人物それぞれの印象が変わる小説でしたが、正直なところ主人公の夏葉子も含め、登場人物ほとんどのことをあまり好きになれませんでした。
唯一「いいこと言うじゃん」と思えたのは後半にバリバリ登場した夏葉子の実父でした。

夏葉子自身は二人姉妹の姉であり、小さい頃から物わかりのいい人として見られてきた故、「なんでも言うことを聞いてくれる便利な人」というレッテルを貼られてしまっています。
そういう生き方をしていると、“嫁”としてもいいように使われてしまうのかな、と思うと、ぞっとしました。
というかそもそも、“嫁”という漢字があることが、恐ろしいですね。

嫁として悩んでいる方にはヒントが得られ、嫁の気持ちがわからないと嘆く方には、嫁の気持ちがわかる小説ですので、お互いに悩みすぎる前に一例としてサラッと読まれてみるとよいかもしれません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年5月10日
読了日 : 2021年5月8日
本棚登録日 : 2021年5月8日

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