むかえびと (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社 (2018年4月4日発売)
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感想 : 21
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パートの助産師・看護師はいるものの、常勤助産師は師長を入れて4人しかいない産科病棟…
産科で勤務したことのない看護師のわたしでも、恐怖で震えてしまう職員構成です…

しかも師長の性格に難がありすぎて、めまいがします。
師長がそんな難あり言動を繰り返すきっかけは書かれていますが、だからといってまわりを振り回していい、というわけではありません。
…とまあ、産科の現状については想像できる部分が多すぎるあまりに、読んでいて怒りどおしでした。

この物語は単行本時「闇から届く命」というタイトルだったそうですが、文庫化にあたり「むかえびと」に改題されたそうです。
しかし読みきったあとタイトルを見ると、「闇から届く命」も「むかえびと」も今ひとつ、しっくりきませんでした。

「一分一秒を争う命の現場で働く“むかえびと”の姿をリアルに描く渾身の医療小説」という裏表紙のあらすじからは、どうしても出産にまつわる感動小説の香りがしてしまいます。
確かに産科のお話であり、出産のエピソードも書かれているのですが、お話の半分くらいにはミステリー要素が入ってくるので、「むかえびと」というタイトルするのは、難しい気がします。
あらすじやタイトルと、物語との小さなズレは、物語がどんなにおもしろくても読みきったあとの「おもしろかった」気持ちを減少させてしまうので、とてももったいなく感じます。

そして小さなことかもしれませんが、なぜ背表紙上の絵が、主人公の美歩ではなく、佐野医師なんでしょう…そこも、小さくですが、もやもやしました。

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ミステリー要素の方はというと、実は早々に犯人と被害者の間の関係に検討がついてしまいました。
かなしい出来事が起きたしくみこそ、説明を読んで「そうだったのか…」とおもいましたが、この人物の触れているこの物を使って「何か」しようとしていることは推測できました。
また敏腕産科医師・佐野の不審な行動の理由も、その行動をとる背景はわからなかったものの、やろうとしている行動自体は推測できました。

おもうに、「むかえびと」としての要素と、ミステリー要素両方を、ミステリー要素がやや多い配分で入れたが故、どちらの要素も弱くなってしまったような感じがあります。
とても読みやすい文章、産科病棟や師長や医院長がおかしな考え方をしていると現場はさらに過酷になる、という大変さはリアルに伝わってきただけに、すこし残念におもいました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年12月21日
読了日 : 2021年12月17日
本棚登録日 : 2021年12月16日

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