そこで暮らしたことはないけれど、なんだか懐かしくて泣けてくる。
魂の記憶を揺さぶる、山里の暮らしをつづった写真絵本。
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新潟県上越市の「中ノ俣」という小さな村の1年の暮らしを写真と文でつづった絵本です。
冬になると雪が2メートル以上積もる地域で、近くの町までは車で30~40分かかります。
そんな中の俣の人たちは、厳しい自然と共存しています。
コンビニも100均もスーパーもないけれど、中ノ俣の人たちは藁から草履や長靴、カゴなどを作り出し、山菜や野菜からおいしいご馳走を作って保存しています。
ゲームセンターやカラオケはないけれど、絶えないおしゃべりと人々の笑顔がそこにはあります。
便利になった暮らしのなかで、人々が失っていったものが、中ノ俣にはあふれています。
そこで暮らしたことはないのに、この絵本を読んでいると不思議と「懐かしいな」と思えてくるのです。
わたし自身の記憶というよりも、太古の人々が紡いできた魂の記憶が、反応しているとでもいうのでしょうか。
とても懐かしくてたまりません。
声高にSDGSなんてものを叫ばなくても、自然から作り出した暮らしの道具や食べ物が、中ノ俣にはあふれています。
その道具や食べ物は自然を汚すことなく、すっとまた自然の輪の中へ還っていけるものばかりです。
不便だけれど、そこにある心豊かな暮らしがとてもうらやましく、何度も何度もページを開いてしまう、そんな絵本でした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
生きること、死ぬこと
- 感想投稿日 : 2021年5月28日
- 読了日 : 2021年5月27日
- 本棚登録日 : 2021年5月27日
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