わたくし率 イン 歯ー、または世界

著者 :
  • 講談社 (2007年7月26日発売)
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本棚登録 : 1091
感想 : 192
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川上未映子作品を読むのはこれが初めて。
これはもともと私の好きな名久井直子さんというブックデザイナーの方が単行本のデザインをされていて、それがきっかけで出会った本です。


これは、様々な私をめぐる物語である。
私 とは、奥歯の中にいると考えている女の人が、生まれてくる予定もない自分の子供にあてて恋人の青木について、自分の生活について手紙を書くという形でストーリーは進んでいく。最初ページを開いて読み始めた時文字の大きさが大きくて行間も広めで読みやすい構成なのに、話が関西弁で進んでいくせいなのかのっぺりとしていてとても切迫感がある印象を受けた。彼女の書く手紙にたびたび登場する青木という人物について、彼が最初に彼女と話したときの会話が印象的。それは、川端康成の雪国の一番最初の文の主語は何なのか、について。これは物語の重要な部分であり、私自身そういえば不思議だなあと考えさせられてしまった。最初このわたくし率の世界に入ると、そこは彼女の妄想の世界でぐいぐいとひっぱられる。が、最後にぱっと彼女視点ではなくて第三者的な視点が登場して物語がはっきりしてなるほどそうだったのかとしっくりときてわたくし率の世界から開放される。そんな感覚の本だった。最初ページを開いて読み始めた時文字の大きさが大きくて行間も広めで読みやすい構成なのに、話が関西弁で進んでいくせいなのかのっぺりとしていてとても切迫感がある印象を受けた。私でもわたしでもワタシでもない、わたくしを私は隠しているのかなあどうなんだろうと考えている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2010年10月18日
読了日 : 2010年10月13日
本棚登録日 : 2010年10月18日

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