回送先:府中市立紅葉丘図書館
東京という都市をめぐる議論というのは、時として世代による視野の狭さを露呈させることがある(評者が都市社会学の知見を時として邪険にするのは、自らの属していると考える世代の大いなるひけらかしに成り下がったからというのもある)。
そうしたなかで、本書は東京という都市のごくごくありふれた街角を切り取ることで、何を見つけることができ得るのかについて仔細な検討を試みた一冊だといえる。確かに姜尚中のネームバリューが大きくなりすぎているがために、そのような検討を詳細に追いかけるのは困難であるかもしれない。しかし、姜自身が言うように「都市では誰もが異邦人(あるいはジャック・アタリになぞらえて遊牧民と言ってもいいだろう)」であり、その巨大な病院である東京という都市の観点から眺めたとき、見えてくるものがあるかもしれない。
そう、東京は巨大な入院病棟なのだ。本書では登場しないがコミケ参加者が有明の癌研有明病院を見る視線はそっくりそのまま姜尚中の言葉に意訳され、なおかつ中和された格好で私たちをも捕らえ直しているということになるともいえるのだ。
読書状況:読み終わった
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借受:多摩地区
- 感想投稿日 : 2011年6月25日
- 読了日 : 2011年6月25日
- 本棚登録日 : 2011年6月25日
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