タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)

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  • 講談社 (1967年2月16日発売)
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『感想』
〇刊行から50年過ぎていても、日本社会が変わっていないことが、いいことなのかわるいことなのか。

〇日本のタテ社会に属さない、いわゆる異端児が成功している分野もあるが、その人は羨ましいというか嫉妬の目が向けられることはあっても、尊敬されているわけではないように感じる。自分たちの組織に持ち込まれても困るから、冷ややかに無視しているのだ。

〇日本の組織はタテ社会を前提に作られているから、そこを大事にしないとうまくいかないことが多い。能力よりも所属年数が大事にされるし、論理的に先輩を圧倒することは、もっと上の先輩の上下関係を維持する使命によって潰されてしまう場合もある。上の人間が下の人間を守らないと、秩序が保てない。

〇リーダーに必要な条件は、実務的な能力のほか、どれだけ人に尊敬されるか。能力ある部下をどれくらい感情面も使ってうまく使えるか。障害となる他の集団を抑えるために、その集団と自分との共通の上司に抑えてもらえるようどれだけ働きかけられるか。調整力が大事だから、それは組織内での経験がものをいうことになる。だからぽっと出の能力の高い新人は、コマの一つとして下積みしながら上を立てることをしないと出世できない。

〇自分も実感していることだが、日本社会のチームって、まず目的があってそれに見合うメンバーを集めるわけではない。もうメンバーが決まっている中で、どの目的を上司が振るかになっている。平均的なチームをいくつか持っていて、ある程度同じ成果がでると見込まれているため、時間的な制約から割り振られていく。他のチームにそのことに強そうなメンバーがいたとしても引き抜けないんだよね。自分のチームの同等の立場にいる人を傷つけることになってしまうから。

『フレーズ』
・日本人は、仲間といっしょにグループでいるとき、他の人々に対して実に冷たい態度をとる。(p.47)

・集団の機能力は、ともすれば親分自身の能力によるものよりも、むしろすぐれた能力を持つ子分を人格的にひきつけ、いかにうまく集団を統合し、その全能力を発揮させるかというところにある。実際、大親分といわれる人は必ず人間的に非常な魅力をもっているものである。子分が動くのは、親分の命令自体ではなく、この人間的な、直接膚に感じられるところの人間的な魅力のためである。(p.155)

・少なくとも他人の考へ方を改めさせるなどといふことは……できることではない。論争において常に大切なものは、本人たちにとつては論理ではなく体面であり、世間から見ると見世物としての性質である。【伊藤整】(p.179)

・日本人は、論理よりも感情を楽しみ、論理よりも感情をことのほか愛するのである。(p.181)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2022年3月19日
読了日 : 2022年3月19日
本棚登録日 : 2022年3月19日

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