ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観

  • みすず書房 (2012年3月23日発売)
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感想 : 176
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過去回のゆる言語学ラジオで聴いて、なんか面白そう!と思ったので、夫からのお誕生日プレゼント資金で購入。

著者のダニエル・L・エベレット博士は当初キリスト教福音派の伝道師として、アマゾン川流域の一部族であるピダハンの村に赴く。1970年代から30年がかりのフィールドワークで、ピダハンの言語と文化、認知世界を解き明かしていくのだが、結論から言うととにかくめちゃくちゃ面白かった。
まずピダハンの言語、文化が面白い。
数がない。色がない。左右がない。
創世神話もないし、自分たちのために食糧を備蓄することもしないから、お腹が空いても狩りに行かず、今踊りたければ一晩中でも踊る。
自分の常識はアマゾンの奥地ではまったく通用しない。
第1章ではそんなピダハン族の生活について描かれているのだが、まったくわからない言語を1から習得するという苦労、異文化を知るって簡単に言葉にするけど、その中で生活するとなると、当たり前ながら全然簡単じゃなくて、著者の奮闘ぶりにすごく引き込まれる。
マラリアで死にそうになったり、交易商人に唆されたピダハンに命を狙われたり、普通にエンタメ系な読み物としてもとてもエキサイティングだった。

第二章はピダハンの特殊な言語から、現在の言語学の主流であるチョムスキーの生成文法理論との齟齬を語っていて、
うーん、…正直めちゃくちゃ難しい。
チョムスキーって名前、ゆる言語学ラジオでは聞いたことあったけど、どんな理論を言っている人だとかは知らなかったので、wikiで調べたよね。
よくわかんなかったけど笑
ところどころ、おっ!と思うところもあったけど、一章よりページ捲るペースは遅くなった。

そして第三章。
これは素晴らしかった。
読み始めの頃からぼんやりとあった問いに一定の解を得たような、さらに大きな問いが生まれるような結びで、
少し高価な本だったけど、買ってよかったと思わせてくれた。

有用な実用性に踏みとどまり、未来を憂うことのないピダハンにとって、この民族の言語や文化を継続させようという外部からの意思というのは是か、非か?
その意思とは誰のものなのか?

…面白いなぁ。

実はこの本にも登場したエベレットの息子さんの、最近出た本も一緒に購入したので、そちらを読むのも今から楽しみ。


読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年3月31日
読了日 : 2023年3月30日
本棚登録日 : 2023年3月16日

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