古代史おさらい帖: 考古学・古代学課題ノート (ちくま学芸文庫 モ 13-2)

著者 :
  • 筑摩書房 (2011年10月6日発売)
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感想 : 5
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子供の頃から考古学が好きで、若い時分には森先生が編集された「日本の古代」シリーズを読み漁ったもの。

暦などの時間の記述や文字が日本に定着していった過程など一歩一歩進めていく記述。景初三年とあるだけで、卑弥呼の鏡などと騒ぐ輩と対局にある。

引用。
「倭人伝」に一度だけみえる「邪馬台国」は晋に遣使した女王台与(トヨ)の国であり、ヤマトでの大型前方古墳の出現からみても、その頃にはヤマトの国造りの基礎は終わっていたとみている。

近畿圏の国造りと邪馬台国は別の事象と考えれば良いだけなのである。倭国から魏や晋への航路を考えたら邪馬台国は九州であろうし、狗奴国と交戦状態にあったことを考えれば更に確かだろう。森先生の主題はそんな自明のことに無い。そもそも邪馬台国は幾つかの女王国の一つで、その時点で卑弥呼は既に亡くなった過去の王でしかない。むしろ、クマソについて多くページを割かれている。ガラス製の玉璧から東シナ海横断ルートでの江南との結びつきなど認識を改めさせられた。中国の学者と語り、また中央と違う地方の歴史を明らかにしようとする姿勢。学者や歴史家も大古墳や銅鏡の数でそれを大勢力と誤解しているという。先生は本当のプロの学者だと思う。

河内王朝の土木工事で土地が生る。今でも西成、東成の名が残る。巨大古墳を築くだけじゃなかった。大阪には古代の痕跡はあまり無いと思っていたので、面白かった。(大阪に単身赴任中の身なので。)
高津宮ってどこだろう。

今日もNHKのアナウンサーが「卑弥呼の墓と云われる箸墓古墳と同時代の‥」などと喋ってる。邪馬台国が近畿に無いと沽券に関わると思うのか、強烈なプロパガンダがあって、こういう結果が齎された。
そして今、書店の古代史の棚を見ると、殆どが思い付きと妄想のトンデモ本ばかり。
森先生が逝去されて、一体、誰を頼って本を読めばよいのだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年12月22日
読了日 : 2015年12月22日
本棚登録日 : 2015年12月22日

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