ぼくのしょうらいのゆめ

  • プチグラパブリッシング (2006年7月7日発売)
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感想 : 5
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2010/6/4借りる

―市川準
僕の家族は両親と4つ上の兄が一人。兄は中学、高校と生徒会長をするような優秀なタイプでした。一緒の部屋に寝起きしていたから、本や音楽などの影響をすごく受けました。家にはたくさん本があって、太宰治や坂口安吾、織田作之助など無頼派の本もいっぱい並んでいた。

映画っていうのは、孤立している人を応援するようなところがどこかあります。たとえば、いい映画の構造を読みといてみると、「結局、人間はひとりぼっちだ」ということと、「だけど頑張って行こうよ」という両方を言っているような気がする。僕の映画は、最終的には孤独な独りに届けばいい。そういう想いが背景にあるのかもしれない。

映画監督という仕事がどんなに複雑で、大変な仕事かということを、思い知る時間でもあった。だけど、僕が映画から教わったのは、世の中にはものすごくいろんな人がいて、いろいろな人生があって、醜いようで美しくて、不思議で楽しい、ということだったから。その映画という世界の広さや精神の豊かさが、いつも自分の心の中の支えだった。この広大な世界にはいろんな人がいる。いろんな生き方があって、大丈夫だと。映画から教わったそういう世界観が、どんな時も、自分の心が解放されたり自由になったりする景気を、作ってくれた気がする。それが僕のあらゆることの根拠になるような気がしています。

―内田裕也
今思い返しても、本当に漠然たる人生だった。だけど、貧乏したときでも「金儲けしたい」と思ったことはなかった。普通は没落すると「金が欲しい!」と思うみたいだけど、そうならなかったのは家族に恵まれたからじゃないかと思う。家族が外の世界や音楽について与えてくれた影響もあるし、俺は今も尊敬しているんだよ。

―大竹伸朗
「おまえ何やってんの?」ってとことん言われ続けたらさ、誰だって嫌になるよ。そんなに人間は強くないもんな。

ただ、最初からわkっているのは、「絶対に答はわからない」っていうことかな。ゴールとかそんなもん絶対にない。やっぱどんなくだらない動機だったとしても「次を作る」っていう気持ちが消えないまま、どこまで行けるのかってことじゃないかな。それはもう「意思」の話じゃない。「描きたくてしょうがない」っていうのは「状態」で、それは「意思」とは違う。

目的が「何かになりたい」だと、なった途端に何かが消えちゃう。「芸術家」っていうのは定義がない。俺は定義がないことに興味がわいてしまう訳でさ。満足するってことは「こういう人は芸術家だ」って定義が存在するわけ。その定義をクリアして「芸術家」になったぞっていうのは、物を作ることとは全く違うことでしょ。今でも正直言って自分が芸術家なのかどうかっていうのはわかんない。それがわかんないから作り続けているんだと思う。

作り続けても、自分中にわかんないものが出てくるんじゃないかな。わかっちゃうと作らなくなる。そこで自分の創作意欲がスッっと満足しちゃうとさ、ストップしちゃうと思うよ。

―祖父江慎
以前にインタビューで、「苦手なことは何か?」と聞かれたとき、とくに苦手なことって思いつかなかったけれど、よく考えると、ずっと同じ状態でいることが苦手なのかもしれない。だって同じ状態で居続けることって、すごくつらいよね、生きてるからねえ。死んでいれば同じままでいいけれど、生きちゃっているからね。

夢を持つこと。それはワクワクしたりうっとりしたりとか、感覚としては悪いことではないと思う。

―谷川俊太郎
ぼくは詩人になりたいとは思っていなかった。いい詩を書く、えらい詩人になる、そんなことよりも大学にも行っていない人間がこれからどうやって経済的に自立するかというのが大問題だったんだ。もう自分は詩を書くしか能がないんだ、社会の中で詩を書くことで自分の役割を果していこう、そう覚悟を決めたのはずっとあとになってからです。

―吉本隆明
つまり僕が学校や仕事でやっていた技術的なことは人間の感情が入らない領域ですから、詩を書くことによって叙情的な欲求を解消していくというか。

「夢を持たないといけない」とか先生方が言ってますけれど、持つことは大変結構なことだと僕は思います。だけど、夢なんて持ったって持たなくたって、そんなの全然関係ないよって一方では思いますね。いくら夢を持ったって持たなくたって、実現なんてできるかどうかわからない。全然予言もできないし予想もできない。何が明日及び未来に自分に覆いかぶさってくるか、まったく予測できる問題ではないからです。

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感想投稿日 : 2010年6月5日
本棚登録日 : 2010年5月12日

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