ねこぢるせんべい (愛蔵版コミックス)

著者 :
  • 集英社 (1998年8月20日発売)
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本棚登録 : 182
感想 : 11

「にゃははは しねしね」
「にゃー にゃー」

なんだこれ・・・と、初読は度肝を抜かれたねこぢるの漫画。まだまだ幼いにゃーことにゃっ太のあどけない瞳の前で、実に淡々と行われる差別や殺人の数々。そして実際に殺してしまう何人もの動物や人間達・・・・・・・。どこか不気味な光のない瞳が、バイオレンスな、嗜虐的な瞳であると分かった時、やはり恐ろしさが込み上げるとともに、どこか共感できるような温かさを感じる。改めて、ねこぢるの漫画の凄みに気づかされる。この漫画は、私たち人間が忌避する、それでいて密かに求めるという二極性の本性に呼びかけ、どちらも体験させてくれる稀有な作品だ。様々なものに抑圧されている人間だからこそ、このどこか動物的な、本来の生と死の感覚(今はそれが「倫理観」という言葉で監視されている)について、懐かしく、惹かれるものがあるのではないか。残酷に求める郷愁・・・たしか江戸川乱歩は、そんな評論を書いていた気がする(『残虐への郷愁』)。ねこぢるの漫画は、ある意味万人受けする漫画だと言えるだろう。それにしても、定期的に読みたくなってしまう作品だ。目をそむけながら、顔をしかめながら、そして、懐かしさに微笑みながら・・・・・・・。

「れいぞうこの巻」「あかしんごうの巻」「がっこうの巻」「ねこざる戦争①~④」「ないぞうの巻」「ガソリンの巻」「スーパーの巻」などは、私たちが直視しない本来の倫理観をいやでもかと見せつけてきたり、懐かしさをかんじる『ズレ』を的確に表現してくれている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年7月24日
読了日 : 2021年7月1日
本棚登録日 : 2021年7月1日

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