ねこぢるうどん 3 (BiNGO COMICS)

著者 :
  • 文藝春秋 (1999年5月1日発売)
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本棚登録 : 125
感想 : 5

「にゃーんかやだにゃー ぶたって」
「にゃ」
「みてるとにゃんかいやなきぶんになる」
「・・・・・・・」

 『ねこぢるうどん』、遂に最後の巻。自分はこの『ねこぢるうどん』シリーズの他にも、アニメーション作品である『ねこぢる草』と『ねこぢる劇場』、コミックでは『ねこぢる食堂』、『ねこぢるだんご』、『ねこぢるせんべい』、『ねこぢるまんじゅう』、『ぢるぢる旅行記』・・・・・・と、様々な作品を通して作家ねこぢるの世界を当惑しながらも彷徨したわけだが、それら作品群に比べれば、今巻『ねこぢるうどん3』の刺激はそこまでないと思う・・・・・・とは言うけれども、今巻は、身体的な残酷さより精神的にクる話が多いので、トラウマ要素を含んでいるのは相変わらず。殊に『西友の巻』などは、今までのねこぢる的要素が凝縮された傑作(?)なので油断はできない。

 自分がねこぢるに抱く印象は、『ねこぢるせんべい』の感想に書いたものが最も近いと思う。まだまだ幼いにゃーことにゃっ太のあどけない瞳の前で、実に淡々と行われる差別や殺人の数々。そして実際に殺し、死んでいく何人もの動物や人間達・・・・・・・。にゃーことにゃっ太のチャームポイントとも言える、どこか不気味な光のない瞳が、バイオレンスな、嗜虐的な瞳であると分かった時、やはり恐ろしさが込み上げるとともに、どこか共感できるような温かさを感じる。自分は敢えて「温かさ」と書いたが、様々なものに抑圧されている人間だからこそ、このどこか動物的な、本来の生と死の感覚について、懐かしく、惹かれるものがあるのではないかと、そのようなことを伝えたかったのだ。

 ねこぢるの作品は、本棚の奥底から、定期的に私に語りかけてくる。そして私はその声を受けて、恐れながらも本棚から『ねこぢる』を取り出し、読み始める。そこにあるのは他でもない、ねこぢるの描いた世界。残酷で、理不尽で、狂気的で、無垢なる世界。私はきっと何時間もその世界を彷徨い、不安になり、怖くなり、困り果てて、泣きたくなって、嫌になって、死にたくなって、ふとした瞬間にこの「生きている」世界に戻ってくる・・・・・・。

私はこれから何度もこのような経験をする気がする。ある時は目をそむけながら、ある時は顔をしかめながら、そして、ある時は懐かしさに微笑みながら・・・・・・・。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年11月13日
読了日 : 2021年11月11日
本棚登録日 : 2021年7月1日

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