高山宏さんの解説が正鵠を射ているのでもはや私の劣文は必要ない気もしますが、とにかく、『少年アリス』はさまざまなものから「解放」されている作品として群青天鵞絨に輝く屈指の幻想譚だと言うことができるのです。
澁澤龍彦さんや短歌の好きな私は、前者には博物誌的な面白さを、後者には音とリズムに凝縮した言葉の感覚の面白さを見出します。ペダンティックな充足を得ることの面白さというより、普段私たちが使う言葉とは違った場所に居る言葉を採集することの面白さを求めて、手を伸ばしているのです。これが私の読書傾向かつ好みです。
そして私の好む作家さんの中に、まちがいなく長野さんも含まれています。解説で高山さんは長野さんを「マニエリスト」と述べ、「意味の重圧から言葉を解放した」本書を評価しています。まったくもっておっしゃる通りだと思います。文字どうしの間隔、本文の余白も趣があります。
さて、私は今回の感想で作中の内容にあまり触れていませんが、いいのです。それこそ私の「言葉」で語るに語れない『少年アリス』の感慨は、言葉や記憶にとどめるよりも、螢星が消えた一夜の出来事のように、夢うつつとしていいものなのです。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年9月10日
- 読了日 : 2022年9月10日
- 本棚登録日 : 2021年8月9日
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