新しい市場のつくりかた

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  • 東洋経済新報社 (2012年10月12日発売)
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新しい市場のつくりかた: 三宅 秀道 4492522050

# ポイント

- 文化振興財団的企業
- 未利用資源の活用
- 枯れた技術の水平思考
- 器用仕事(ブリコラージュ)とセレンディピティとアブダクション
- 「現場主義」はロケーションの問題ではない。自分なりの働きかけで世界から自分にしか取って来られない情報を取ってくること。
- 社会の消費者の誰かの暮らしのどこかにどう自社資源の恵みをはめ込むか?
- 「家元」の優位性→最初に文化・ライフスタイルを確立した主体の先行優位性、ゲームのルールを決める側
- 社会に対してオープンな組織→社会がすなわち商品開発組織
- 「未名」の対象…まだ名前がついていない→未規定性そのもの、偶有性を受け入れる器→プロトタイプでコミュニケーション

# 抜粋

> 水泳帽メーカーである磯部商店が、単に水泳帽というものを提供するだけではなく、それをどのように使えば便利かというノウハウ、それを使った成果をどのように評価するかという価値の尺度までソフトを整備して社会に提供することで、それまではその商品を使う風習がなかった人たちに新しい風習を教え込んだのです。つまり、同社が売ったのは、モノであってモノでなく、水泳帽というモノは代金決済の手段であって、実際には商品は新しいプールライフの形だったのです。
p.102

> 自分と違う考えの人、自分と立場が違う人、自分と違う欲求を持っている人、自分と違う技術や経営資源を持っている人と、他者と他者として真っ向から交流し情報を取ってきてこそ、未整理の混沌の中から良い偶然を必然として発生させることができる。それを社内に持って帰ってきて、取り込んで、新しい市場創造につなげる、そういう生き方が確かにあるのです。
p.350 終章:東浩紀、大澤真幸っぽい

# メモ

企画という行為は、全く理知的ではなく、歴史的偶然に翻弄されるアクシデント。
起業家精神とオーナー経営者。
文化開発。文化は生活習慣と価値観。
新しい文化→新しい市場 ※文化的な差別化
文化開発:問題→技術(実現可能性)→環境(システム)→認知(欲求、導入)
問題:問題発明(生活の論理)+問題発見(生産の論理)
「○○したい」→新しい幸せ(満たされた場合)/新しい不幸せ(満たされなかった場合)
 →抑圧、近代化、東京への憧憬、『おら東京さ行ぐだ』的な
制約:技術的/社会的/経済的/文化的
文化的制約:機会
「当たり前」
最終目的、超越的な第三者の審級、宗教、神
コンセプトの正統化→傲慢さ
問いと解のセットで提供 ※iPhone、自作自演
文化振興財団的企業
例:プール →ハコモノ・遊休資産の活用
 →シェア(コ・ユース)
スカンク・ワークス=ノアの方舟
設計情報処理システム/設計情報転写論
 →アプリオリでウォーターフォールっぽい?
 →一層デザインプロセス論が大事?
 →一人の担当者に権限と責任を集中させる。
 →コミュニケーションコストの削減とスピードアップとコンセプトの一貫性
作り手(候補)も使い手(候補)もまだ全員が素人の段階、手探り
新しい商品は既存のエコシステムに入ると「軋み」を起こす。
「現場主義」はロケーションの問題ではない。自分なりの働きかけで世界から自分にしか取って来られない情報を取ってくること。
社会の消費者の誰かの暮らしのどこかにどう自社資源の恵みをはめ込むか?
「家元」の優位性→最初に文化・ライフスタイルを確立した主体の先行優位性、ゲームのルールを決める側
社会に対してオープンな組織→社会がすなわち商品開発組織
「潜在ニーズ」は事前決定論 → 「正解」を探す。
 →自らの製品を「正解」にする能動的な働きかけが重要。
  →野中郁次郎っぽい。個人的信念から普遍的真理への正当化。
「アンテナ」…自分だったらこれはこういうふうに解けるかも、というように、意識が、取りかかろうとする前から無意識に問題を選んでいる。
 →問題解決力が問題を開発する。「解けるかも」の領域が拡大するので。
 →社会の中で困っている人を見つける。
  →共感・なんとかしてあげたい、ジェントルな優しさ
   →親切で面倒見がいい、お節介な人柄
    →リサーチ向き、具体的課題なしのリサーチ活動
「未名」の対象…まだ名前がついていない
 →未規定性そのもの、偶有性を受け入れる器
  →プロトタイプでコミュニケーション

# 感想

野中郁次郎、石井淳蔵を連想。
ふだんから考えていることと近かった。
三宅氏の論文は既読だし。
その意味で驚きは無いが、だからこそ大部分に納得できる名著。

- CiNii 論文 -  消費システム整備による商品開発 : 墨田区両国・フットマーク社の事例から http://ci.nii.ac.jp/naid/110004520164
- 「文化開発論」のための概念整理の試み—潜在していたのは「ニーズ」か? http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/mmrc/dp/pdf/MMRC296_2010.pdf

『デザイン・ドリブン・イノベーション』にも通じる。 http://booklog.jp/users/zerobase/archives/1/4496048795

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マーケティング
感想投稿日 : 2012年10月29日
読了日 : 2012年10月27日
本棚登録日 : 2012年10月20日

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