遣唐使 (岩波新書 新赤版 1104)

著者 :
  • 岩波書店 (2007年11月20日発売)
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2004年に中国で見つかった、日本人留学生・井真成の墓誌をはじめ、遣唐使にまつわる話。
朝賀(元日)に合わせるために、わざわざ気象条件の悪い夏に出発したとか、唐についてからも寒い中陸路が大変とか、現地で結婚する人もいたが伴侶を日本に連れ帰ることは禁止されていたとか、興味深い。
有名な「日出づる処の天子、日没する処の天子に」というフレーズは『大智度論』の表現を借用した、東西の文飾に過ぎないというのが、深い意味はなかったのか、と。
毎年の朝貢を、遠いからという理由で免除され、それが功を奏して唐の制度のいいとこどりで国の仕組みを整備できたとか(宦官を置かなかったなど)、「天皇」と表記すると日本は臣下と思っている唐の怒りを買うため「主明楽美御徳(すめらみこと)」と音写にするなど、島国だから目が届かない利点を活かしてきたというのが興味深い。
しょっちゅう遭難しているイメージだが、実際はそうでもない。4隻4~500人が平均、水手(こぎ手)も多い。大きな船もできるようになり、無事戻った船は名前を賜ったりしている。遣唐使から戻った人は3年間税免除。
遣唐使にまつわる制度や、ダブルスタンダードな外交が見えてきておもしろかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2019年5月4日
読了日 : 2019年5月4日
本棚登録日 : 2019年5月4日

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