女には向かない職業 (ハヤカワ・ミステリ文庫 129-1)

  • 早川書房 (1987年9月15日発売)
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本棚登録 : 999
感想 : 88
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題名からしてずるい。「女には向かない職業」はなにを想起させるだろう。二項対立で考えるなら、少なくともP.D.ジェイムズには「女に向く職業」が思い浮かぶということだ。ビジネスパートナーの突発的な死によって、コーデリア・グレイは22才の若さで私立探偵として自立を決意する。その直後、名士の息子が自殺した理由を調査するよう依頼される。コーデリアは地べたを這うように調査を進めるのだが、その様子を「可憐」と口走らせることがP.D.ジェイムズの狙いだろう。「こういう女の子が好きなんでしょ?」とほくそ笑むのが透けて見える。青春小説でもある。コーデリアは特殊な青年期を過ごす設定になっている。父親はヒッピーのごとき詩人であり、愛情をかけて育てられていない。放浪生活を強いられたり、修道院生活を送らされたり、よくある友情を経験できていない。多感だが「浮いてる」彼女が、調査対象の息子が通う大学の友人たちと、舟遊びしたりパーティーするときに洩らす自己言及が、だいたいみんなが持つであろう孤独感と共鳴して印象的だ。トリッキーではないが、ミステリーのプロットとしても秀逸。コーデリアと境遇が似てるウィノナ・ライダーが若いときに演じてほしかった。名著です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2012年7月4日
読了日 : 2012年6月24日
本棚登録日 : 2011年12月11日

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