戦略の本質: 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ

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  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2005年8月1日発売)
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◆戦略とは、「何かを分析することではない。本質を洞察し、それを実践すること。認識と実践を組織的に綜合すること」である。

◆戦略を左右し、逆転を生み出す鍵はリーダーの信念や資質にある。日本のリーダーには、徹底的にリアリズムが欠落していると同時に、理想主義も貧困である。優れた戦略的リーダーは、これらを同時に達成している。リーダーには、理想主義的リアリズムが求められる。

◆戦略論は、人間世界を研究対象とする社会科学の一分野である。自然科学との重要な差は、対象としての人間が意図や価値を持ち、その実現にむかって思索し、予測し、行動し、修正し、環境の影響を受けつつ、環境を変えていく、能動的・反省的な存在である、というところにある。人間の世界を対象にしているということだ。


◆人間は、主体的にコンテクストや状況を察知し、その意味を言語化し、ダイナミックなコンテクストの中で持てる知識や技能を行使していく。人間の世界は、客観的事実ではなく、その都度コンテクストに依存する「解釈」によって成り立っている。一方、自然科学は、事象を特定のコンテクストから独立させて捉え、普遍妥当の原理原則を追及する。人間と人間世界の洞察なしに戦略の本質をさぐることはできない所以だ。

◆賢慮型のリーダーは、環境や現場を直感する。生きたコンテクストを分析的に対象化するというより、その中に身をおき、細部の語りかけを察知する(認知科学でいうアフォーダンス)。同時に、自らの哲学、歴史観、審美眼を綜合したビジョンにもとづいて、直感を大きな潮流(全局)と関係づけ、現実の本質を洞察する。

◆綜合されるべきものは、科学的知識としての理論的なknow why、実践的なスキルとしてのknow how、そして実現すべき価値(達成すべき目的)としてのknow whatである。これが戦略、リーダシップの本質を考える根底にある。

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カテゴリ: 働く
感想投稿日 : 2006年8月23日
本棚登録日 : 2006年8月23日

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