Enduring Love

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  • Amazon.co.jp ・洋書 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780099276586

作品紹介・あらすじ

One windy spring day in the Chilterns Joe Rose's calm, organised life is shattered by a ballooning accident. The afternoon, Rose reflects, could have ended in mere tragedy, but for his brief meeting with Jed Parry. Unknown to Rose, something passes between them - something that gives birth in Parry to an obsession so powerful that it will test to the limits Rose's beloved scientific rationalism, threaten the love of his wife Clarissa and drive him to the brink of murder and madness.

感想・レビュー・書評

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  • 夏ごろ読んだ本です。作者はこの次に書いた”Amsterdam”でブッカー賞を取ったんですが、世間の評判としては「この前の”Enduring Love”であげればよかったのに・・・」だったみたいです。”007”ダニエル・クレイグ主演で映画にもなりました。

    科学ジャーナリストの主人公は、美しく賢い恋人と、人もうらやむ生活をしているのですが、ある気球事故にいあわせたことから、生活が激変してしまいます。事故現場で出会った若い男が、主人公に恋してしまったばかりか、主人公も(男同士だけど)自分を愛しているものと思い込み、ストーカー行為を始めるのです。男の行為はどんどんエスカレートしていくのに、恋人はすべては主人公の妄想ではないかと疑いはじめ、主人公の完璧に見えた生活はあっという間に崩壊していきます。

    ある意味、愛についての物語です。完璧に思えた主人公たちの愛が危機に瀕し、脇役にも愛を信じられず苦しむ人が出てくる中、”de Clerambault's syndrome”という一種の精神異常と思われるストーカーの愛だけが揺らぎません。永遠の愛なんて、一種の精神異常なのか?という、かなり皮肉な問いかけにもみえます。

    また、体験したことに物語を見出し、それを語りたい、人間の性(さが)についての物語でもあります。主人公が作中で書く科学記事のなかに、19世紀に書かれたある論文が、いかに科学的根拠なく、一つのエピソードから思い込みでストーリーを読み取ってしまっただけのものか、ということを(その時代の特徴として)紹介するものが出てくるのですが、結局人間は日々接するものから物語を読み取らずにはいられません。ストーカーは主人公が身じろぎしただけでもそこに愛を読み取り、恋人はちょっとした彼の行動から狂気を読み取る。もしかして主人公も考えすぎているのか? それと関連して、人間の記憶の不確かさもさりげなく描かれます。

    心理サスペンスであり、ミステリーでもあり、でも重層的にテーマが仕掛けられた文学作品でもある。詳細な描写とペダンティックな文章、イギリスらしい暗いユーモアに好みが分かれるのかもしれないけど、文学的に評価されつつもベストセラーなのが納得の一冊。

  • 衝撃的でした。

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