Frankenstein: Complete, Authoritative Text With Biographical, Historical, and Cultural Contexts, Critical History, and Essays from Contemporary Critical perspective (Case Studies in Contemporary Criticism)

制作 : Johanna M.Smith 
  • Bedford/st Martins
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  • Amazon.co.jp ・洋書 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780312191269

感想・レビュー・書評

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  • 児童心理学の論文で(鉄腕アトムと並んで)取り上げられていたので読み返してみようと思い立った。

    ついでに、批評論文がついているこの版を入手。後半が批評で、こちらは読み終えていないが非常に興味深い。

    物語そのものについては、やはり最後に考えさせられるのは「誰が、モンスターをモンスターにしたのか」という問い。
    この生き物を創造したにもかかわらず、親の立場でありながら愛情を与えなかったVictorに全責任があるのか、外見だけで彼を忌み嫌った世間というものが悪いのか、愛されたいという望みを、報復という形にゆがめてしまったこの生き物の道徳観念にもとから問題があったのか。確かに、現代で社会からはみ出した子供たちの状況にも当てはまるのかもしれない。

    ある船乗りの手紙の中でVictorの語りがあり、その語りの中で怪物が語り、その語りの中で彼の出会った人々(盲目の男性とその子供たち)の会話があり...と、何重にもストーリーが重なっているのだけど、これがラストで生きてくる感じ。結果、著者は様々な人物の観点を提示し、Victor側の主張も、モンスター側の主張もそれなりの正当性があるのだけど、語りに熱がこもっているのは断然モンスターのほうだと思う。実際には文中でこの生き物をモンスターと呼ぶのはVictorだけで、彼は真の意味でモンスターではなく、純真な心が裏切りによって徐々にゆがんでいくまさに子供のような存在として描きたかったのだと思う(ちなみに、フランケンシュタインはVictorの性であり、モンスターを指さない。名前すらもらえなかった、という点が重要であって、その意味でこの怪物をフランケンという名にしてしまった後世の映画やスピンオフ作品は誤りなのだと思う)。

    さて、こういうことを考えた上で、後半の批評を読むと、Victorと怪物の関係の解釈がそれこそ星の数ほどなされている点に驚く。ジャンルとしては、SF、ホラー、ゴシック、ロマンス、純文学であり、マルクス、ラカン、フロイト、フーコーのセオリーに当てはめたり、Racism、Feminism(著者が女性ということもあって)、児童心理、宗教、さらに、現代のクローン技術の倫理観念等、ほとんどすべての分野で参考テキストとして使うことが可能のよう。個人的には、「女性の特権である『子を産む』という能力を男であるVictorが得ようと試みたために生じた悲劇」とみた論文が一番興味深かった。

    要は、いつでもどこでも、フランケンと、その怪物というのは存在する、ということなんだろう。

    突っ込みどころはいろいろあり、特に怪物を創造する過程があいまいすぎるのだけど(マイケル・クライトンならいかにも!な解説が長々つくんだろうな)、これについては最後にVictorが「この技術は私が墓に持っていく」みたいなことを船乗りに言っているので、優れたごまかしだと思う(笑)。いずれにせよ、生まれて数年であれほど饒舌に論理が展開できる怪物がうらやましい(笑)。

  • 多読の授業の教材として読みました。モンスターのセリフがかっこいい。

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