The Woman Who Walked Into Doors

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  • Amazon.co.jp ・洋書 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780749395995

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  •  主人公のポーラが十七年に亘る夫からの暴力に耐え、自身のアルコール中毒と闘う結婚生活には全体からみると比較的少ないページ数を割かれているが、めまいがしそうなぐらい濃密に描かれている。アルコールを断とうとするのに耐えられなくなって言い訳を探しては飲んでしまう葛藤、暴力の具体と極度の身体的な痛みが抽象化するさまは読んでいてつらくもなる。脱けだすことのできない暴行を受けながらそのまま死んだ方が楽になると何度も思う主人公がそれでも立ち上ってしまう不可思議さは女性や母の強さを越えた、普遍的、絶対的な人間の不可思議さにつながっている。
     過去と現在の時系列を直線的ではなく巧妙に前後した構造で読者は物語が主人公ポーラの勇気を称えた英雄物語でないことを知る。暴力をふるい続けた夫が警官に撃たれて死んでしまうこと、ポーラがその死を悲しみ、それでも彼を愛していることを冒頭に近いところで知らされるからだ。
     ポーラの住む世界は幼少の頃から成人になるまで貧しく、教育程度も低い環境である。加えてアイルランドという郷土色も強い、だから最初は入り込めないかと思ったが、話がすすむにつれて身に覚えのある心理や感覚がじっくりと明確に現れてくる。ポーラの自らの理性、理由づけへの疑問は誰もが経験のある命題だ。意味深長で多重性のある題もこれを裏付けているのではと思う。
     最後の最後までたぶんこの小説は好きになる小説ではないと思っていたのに、読み終わった時のセンセーションが独特で、最後で評価が翻った作品。読後感のポジティブさはハッピーエンドからくるというよりも、私たちの、自覚ももたずにロジックの通用しない、予定調和ゼロの世界を生きてしまう原動力からくるポジティブ感。そんなものがあると感じさせてくれたこの小説はすごい。

  • Roddy Doyle was my high-school favorite author; I devoured myself in ''Paddy Clarke Ha Ha Ha'' and ''Van''. Reading back this book after 10 years or so, it still makes me feel what it did then. His absolute positive atittude towards the world is why he is so special. Makes you believe in courage, openness and humanity.

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