Battle Hymn of the Tiger Mother

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  • Bloomsbury Publishing PLC
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  • Amazon.co.jp ・洋書 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9781408813164

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  • Wall Street JournalにWhy Chinese Mothers Are Superiorというタイトルで発売前後に抜粋が載ったのだが、その内容がWestern式子育てを真っ向から否定し、「ウチの子は中国式でこんなに厳しく育てました。おかげさまで優秀な子に育ちましたよ~」みたいなメッセージを前面に押し出したものにされてしまったため、ずいぶんと批評にさらされたようで。
    (ちなみに、WSJのタイトルはChua氏本人がつけたものではない、と、本人がインタビューで言っていた)。

    「中国賛歌」というイメージがメディアによって定着した後では、本の真のメッセージは伝わりにくかったと思う。実際、批評を読んでもWSJに書かれた内容以外の部分に触れたところがなく、みんな過剰反応してる印象を受けたので、読んでみようと思った。

    確かに、う~ん、なところもある。のだけど、子育ての方針としては、それほど外れたことは言っていない。我が子の可能性を信じて、最大の努力をする。親は、それを無条件で支持する(親が100%リードする、というのが問題だと思うけど)、というのは、中国式というよりアメリカ式では?本の中で「ウチの子は、ウチの家族は、…」と、延々と自慢してるのは、まさにアメリカ人だと思ったのだけど(笑)。

    あと、確かに日本の教育ママとかに通じる部分もあるものの、彼女のメンタリティに一番近い人たちって、市民権運動時代の黒人の大人たちや、それより前のヨーロッパ移民(ユダヤ人とかね)だと思う。で、当時市民権運動に関わった人たちが、インタビューで「われわれが次世代のために必死で勝ち取った権利のおかげで、多くの子供たちが教育面でも経済面でも豊かになった。その子供たちがそれらの権利を当然のごとく受け止め、努力をやめた」と言ってる。Chuaの「移民3代ルール」は、ここにも見事に当てはまってるんじゃないか。

    で、ふつうの子育て奮闘記として読むと、鼻につくところはあっても確かに面白いところもたくさんある。あえて難癖つけるなら、Chua氏の文章。分かりやすくて読みやすいんだけど、やっぱり学者であって作家ではない。話があちこちに飛んで、あまり深いところまで突っ込んでいないし、自分視点でのみ描いているので、子供たちやだんなさんのキャラクターがすごく薄く感じる。ユーモアなんだか嫌味なんだかわかんないとこあるし。

    多分、本人としては自分の失敗を面白おかしく書いてみよう、って自虐的な部分も盛り込みたかったと思うんだけど、それが伝わっていないんじゃないかなあ。そういうあたり、勉強ばっかりで心の栄養を養ってこなかった、彼女の受けた教育方法が反映されてるのかも、と思ったり(でも私なんかより100倍以上文上手いけど)。この10年に書かれたアメリカ人の自伝や回想録はた草読んだけど、911について全く触れていなかったのはこの本だけだし。そういうとこみても、どうも空気読めてないんじゃないか??という批判はある。(911の日もピアノの練習してたのかなあ?)

    惜しいのは、SophiaとLuluの間で、どんな姉妹関係が築かれたかがよく描かれていないので、Sophia対母、Lulu対母の葛藤描写のみで、家族全体のダイナミックが分からずに終わってしまうところ。それこそ、Amy Tanなんかがこの辺を書いたら、めちゃくちゃ面白い話になるのに。

    それと、Chua氏が、子供や家族の自慢に一生懸命で、彼女自身がどれだけ多くの犠牲を払ってきているか、という点が不思議なくらい強調されていない。それこそ、さらっと読んだだけではものすごい自分勝手でこわいかーちゃんだ、と誤解される確率のほうが高いが、実際、大学教授、本の執筆、家族(義母や妹の世話)や犬の世話、を全部やって、さらに何時間にわたる娘2人の音楽のレッスンをつきっきりで監督、著名な先生につかせるために車で片道2時間の送り迎え、自分の年金を解約して娘のバイオリン購入、とか、これ、普通の親にはできない。ウチの子は学校の吹奏楽に入ったけど、放課後夕食準備時に毎日迎えに行くのだってきついのに(笑)。

    「自分は嫌われてもいい、娘の将来が開けるなら」。自分は、ここまで自分を犠牲にできるか、と考えた時、「自主性を育てる」という聞こえのいい名目のもとで、我が子を放置して「ママだって輝きたい」とか、「自分の時間を大事に」、なんて言ってる親は、実は単なるご都合主義では??と思え、少なくともそういう人たちに他人の子育てをどうこう言う筋合いはないなあ、と感じてしまう。Chua氏は、暴言は吐くけど暴力は振るってないよね(ふるってたら本書けないよな)。

    とはいっても、断然面白くなってくるのは母親の「負け」が見えてくるPart 3以降。少なくともLuluは立派に母親から自立していくんだろうな、というのがうかがえて、気持ちのいいラストではあった。

    あと、どうでもいいことでは、この本が出て、Chua氏が「モンスターマザー」と呼ばれているようだけど、本の中で「子供がBを取って、子供を責めるのがChinese Mother、学校の教育が間違ってると学校に文句をつけるのがWestern Mother」だそうで。日本のモンペはWesternなわけだ(笑)。

    あと、他にこの本で有益だった新情報は、バル・キルマーとケリー・マクギリスがジュリアード出身ってこと(Chuaのだんなさん(退学)と同期)。トップガン見たくなった(笑)

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