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- Amazon.co.jp ・洋書 (32ページ)
- / ISBN・EAN: 9781447218357
感想・レビュー・書評
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記憶と痕跡がテーマの絵本。
コンピュータも携帯電話もテレビもなかった時代に生まれた少年の祖父は、農場で育ち、水疱瘡にかかり、ファーストキスをかすめとり、ハイスクール卒業後は園芸を勉強したいと思った。しかし戦争が勃発して戦地に駆り出され、結婚し、子どもをもうけ、孫も、ひ孫も生まれた。
本書に描かれている庭を歩き回っている少年もそのひ孫のひとり。本書ではいまはかなり年老いたひとりの人生は直接描かれない。そこが良い。
そのすべてを、彼が作ってきた庭のかたちが物語る。少年は庭で遊ぶことで、曽祖父の記憶の痕跡を、言語によってではなく五感で感じる。曽祖父の記憶はおぼつかなくなったが、だいじなことは庭が記憶してくれている。
そこになにか、デジタルな記憶装置とは別の豊穣さが隠されているのかもしれないとほのめかすようなお話。
庭もまた変化する。忘れるということは記憶の欠落ではない。新たな配置、新たな星座を結ぶこと。
再読するたびに味わいが深まる本。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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