- Amazon.co.jp ・洋書 (32ページ)
- / ISBN・EAN: 9781536218091
感想・レビュー・書評
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アートの授業が終わっても、Vashtiは椅子に座ったまま。彼女の紙はまっさら。
そこへ先生がやってきて、
「ただ点を打ってごらん。そしたら何が起きるか見てごらん」
Vashtiはなかば偶然に任せて点を打つ。すると先生はそれをじっと見たあと、サインをするように言う。
翌週、アートの授業に行くと、先生のデスクのうしろにVashtiの”点”が額に入れて飾っているではないか。
それが引き金となり彼女は、もっと良い点を描けるのではないかと思いはじめる。ここから、点の追究が始まる。
彼女はひたすら"点"を作る。その過程で、点にもいろいろあることがわかってくる。
作品の公開日、一人の少年がVashtiを見上げている。少年は言う。
「君はすごく偉大なアーティストだね。僕も描けたらなあ」
「きっとできるよ」
と彼女は返す。少年は、それに対して、定規でまっすぐな線も引けないと言う。そこで彼女は少年に一枚の紙を渡す。
少年は震える手で線を描いた。それを見たVashtiは言う。
「サインをして」
このお話の先生の言葉はどうやら事実にもとづくらしい。作者が7学年のときの数学の先生の言葉。
数学の先生ならではのアドヴァイスだと思ったが、同時にこれはとても実践的な創作のコツでもあると思った。
また、この先生が偉かったのは、額に入れてしまえば、どんなものだって簡単に"権威づけられる"ということを気づかせたことだ。逆にそれが、作品そのものに磨きをかけたいという欲求を駆動させる。
まずは偶然に任せてでもとりあえず意味は二の次にして"モノ"を先にかたちにしてしまう。
そうすることで、なかば他人事のようにそれを眺めることができる。そしてそれを既成事実として、その後の展開を考えられる。
じっさい、そうやって出来上がった小説や絵画が好きだ。思考の軌跡を辿れるからだ。音楽になるとさすがに無理が出てくるが(例えばジョン・ケージとか)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
絵を描くのができないと思っている女の子。そして素敵な先生。女の子から男の子へ。人を成長させていくことってこういう事なんだなと思う絵本です。点を芸術に、思いを後世へ。