L'etranger

著者 :
  • Gallimard
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  • Amazon.co.jp ・洋書 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9782070306022

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  • Aujourd’hui, maman est morte. というよく知られた最初の文章。主人公のムルソーが母親の死を知って、Ou peut-être hier, je ne sais pas. (今日か昨日か定かではない)というのは一見確かに感情が平ら過ぎるように見えるが、養老院に入れた母親との距離や子どもと親の関係、さまざまな意味での子どもの側の良心の呵責など、我が身に引き寄せて考えると、外側からは見えない鉛のような重い感情があるのではないかという想像は働く。実際、アルジェリアの強い陽光と母親の死が、繰り返し彼の中の何かを動かしているのが感じられる。外面的に見える人の行動と内面の齟齬。事あるごとに、 « mais cela n’avait pas beaucoup de sens pour moi », (自分にとってあまり意味はない)« la différence n’est pas grande »(大した違いはない)といい、周囲の出来事に対してムルソーが自分を閉じている様子が分かる。
    殺人に至る海辺での状況描写で、「ここで引き返せば済んだことだった」としながら、海辺の陽光の強さをC’était le même soleil que le jour où j’avais enterré maman(母の葬儀の日と同じ陽光だった)と形容し、まったく表には現れない、気持ちの奥に沈んでいる母親の死の哀しみが無意味な殺人という行為の引き金になっているように読める。
    裁判では、なぜ一発目の後、二発目を撃つまでに間があったのか、なぜすでに倒れている被害者に何発も撃ったのかと聞かれるが、そこに意味はない。読み手としても意味はないだろうと思うのだが、そこに何かしらの理由やロジックがなければならないという建前で動く社会。人が正直に吐露する気持ちと、社会が求めるロジックは乖離する。友人の証言の場面でも、On ne demandait pas des appréciations mais des faits (評価ではなく事実を述べてほしい))と証言が一蹴される場面がある。
    死刑を宣告され最後にムルソーに残された希望は、自分に憎しみを持つ多くの人が自分の死刑執行を見守ること。自分が孤独にならないために、だ。死刑制度に反対を訴え続けたカミュが1942年に書いたこの作品、のちにフランスから死刑執行がなくなるまでまだ長い年月を要するが、今も死刑がある日本では、このラストはどのように読まれているのだろうか。

  • 言わずと知れた不条理を扱った名作。かつて僕はかなり熱心に読み込んだようで、再読してみたらあまりに文庫本に線がたくさん引かれていて驚きました。

    あくまで常に冷静沈着、感情の起伏と論理的な一貫性がなく、思考が謎に包まれている主人公ムルソーが発する魅力について僕はまだうまく言葉に表せませんが、これからもことあるごとに『異邦人』の世界を振り返ることでしょう。

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