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- / ISBN・EAN: 9783150084465
感想・レビュー・書評
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20世紀ドイツを代表する哲学者マルティン・ハイデガーの唯一と言って良い芸術論。ちょっと長い論文程度の分量。
内容としては、存在の根拠でありながら自らの存在を覆い隠そうとする〈大地〉と、存在者の関係を開示することを本性とする〈世界〉との闘争の場として芸術作品を捉え、作品においては世界の開示性によって大地が露出する、すなわち存在の真理がアレーテイアにもたらされるというもの。
作例として取り上げられるゴッホの絵画をめぐって、そこに描かれているのが農夫の靴だとハイデガーが述べていることに対して、メイヤー・シャピロなど美術史家から、それがゴッホの靴であると指摘されているように、ここでの真理は対象の概念的認識に関わるものではない。とはいえ、ハイデガーの芸術的教養の無さが露呈する一件であり、この芸術論自体もまた、彼の哲学の説明として芸術を利用している感じは否めない。
また、大地と世界との弁証法的図式も如何にも古典的なドイツ哲学の伝統を脱しきれていない感じを受け、『存在と時間』などに見られるような鋭さはないように思える。
つまり、「あのハイデガーが芸術を論じている」ということ以上の重要性があるのかどうかわからない。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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