シンセサイザーと宇宙 (岩波ブックレット NO. 59)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (70ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000049993

感想・レビュー・書評

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  • 冨田勲先生について、ざっくり知りたいのであれば分量的にこれが一番手っ取り早いかも。

    「シンセサイザーとは、絵の具の入っていないパレットのようなものである」というような記述が印象的。それはシンセサイザーの生みの親であるモーグ博士の「私が目指すのは、可能な限りの自由度と広い調整範囲を持ち、無限の可能性を実現する楽器」という理念とも重なる。

    少年時代の経験から宇宙に想いを馳せるようになったこと、音場に対するこだわり、氏の音楽とクラシック音楽との関連など、最小限のことを知ることができる入口的な一冊。

  • 2014.12.7市立図書館
    のっけからいきなり、指揮が不得手な自分に見切りをつけて、オーケストラという扱いにくい不便なものから自分の自由に音を作れて、やり直すことにも文句を言わない強力な個人持ちのオーケストラとしてシンセサイザーに希望と活路を見出した、という事始め。
    ラジオで聞いた「春の祭典」に衝撃を受け、大枚はたいてアメリカからレコードと総譜を取り寄せて聴きまくり譜読みやオーケストラの構造を学んだ青春時代。灯火管制で星空がきれいだった子ども時代、戦時下で望遠鏡など売っていなくて自作したというエピソードも楽しい。その宇宙少年が宇宙から聞こえてくる音に興味をいだいたというのも自然な流れ。
    この前半部分だけでも、音楽や宇宙に興味あろうとなかろうと一読おすすめ。
    なるほど! そんな富田さんだから、いまもヴォーカロイドと共演するようなパイオニアでいるんだなと納得できるおもしろさとユニークさ。

    後半は、オーストリアのブルックナー音楽祭に招待されて行った野外イベント『マインド・オブ・ザ・ユニバース』の話。
    著書出版当時(1986年4月)はまだ構想でしかなかったけれど、自由の女神百年祭のイベントとして1986年秋にニューヨーク・ハドソン川で行われた『バック・トゥ・ジ・アース』というのはこの本の中で語られている続編(完結編)だったのだろうか、もっとくわしく調べたいところ。
    結びはシンセサイザーの未来について語っているが、はたして30年近くたった21世紀の今、シンセサイザーの新しい演奏法がどんどん開発されたといえるかどうか心もとないと感じた。いまだにパイオニアであり続けるのは富田さんとしてはちょっとさびしいことではないだろうか、という気もする。シンセサイザーは音を生み出すパレットのようなもので「シンセサイザーの音」というものは存在しない、という一文になるほどと思ったが、今も「シンセ=エレクトーンの親玉」ぐらいにしか思っていない人多そうだし。

    追記:気に入ったので書店で購入。2012年に<岩波ブックレット創刊30周年 いま、もう一度読みたい、この1冊>として復刊(増刷)されていた。よかった。

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