- Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000220217
作品紹介・あらすじ
なぜ「赤毛のアン」は日本で強い人気を保っているのか。モンゴメリの生涯と創作過程を詳細に追跡し、男まさりの少女の成長の物語が戦後日本の女性の内面と深く関わっていることを論じ、新しい「アン」像を打ち立てる。
感想・レビュー・書評
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プリンスエドワード島を訪れるのは圧倒的に日本人女性が多いという。なぜ「赤毛のアン」が日本人女性に受け入れられるのか、日ごろ女子大学生を教える著者が、モンゴメリの評伝という形をとって、日本人女性の結婚観、仕事観、幸福感の特異性を考察。
小倉氏は「赤毛のアン」は通俗的な物語である、といい、しかしその通俗性の裏に隠されたアンという少女の心性がわからなければ、学生や友人たち、ひいては戦後日本女性の心性は解明できないと結論するようになった。
小倉氏はアンの世界にうっとりする、ということはないと見受けるが、アンの世界とモンゴメリ自身のことを調べ、さらには村岡花子にまで手を伸ばし、調べれば調べるほど調べることが止められなくなる状態に陥った、ひとまず「モンゴメリ篇」で出版した、とある。・・アンの世界にどっぷり浸ることはなくても、モンゴメリとその作品である「アン」の世界には興味が尽きなくなる、という性質が「アン」にはある、ということか。・・私もそうなりかけている。
前半、モンゴメリの評伝のところは読めるのだが、後半、フェミニズム的分析になると、そこまで分析する? 深読みでは?という気も。でもそれが学者なのかも。
メモ
・ロマンチックの呪縛
赤毛のアンの世界には日本に無い風景や果物、家や家具が満ちている。
「女性であること」と「作家であること」の両立不可能性に自殺という結論を出したバージニアウルフとモンゴメリ。その問いに対し日本では「男性に愛されること」と「何者かになって社会から承認されたい」という欲望の両立困難性に矮小化されている。
ノスタルジアが「人は知らないものを望むことはできない」ものなら、日本人はアメリカという支配国がひそかに劣等感を抱く(欲望の現れである)イギリスに、アメリカを媒介にして欲望し、そのイギリスを媒介にして、近代初期の高貴な精神を最もよく体現しているプリンス・エドワード島を欲望してきたのかもしれない。
「イマーゴ」(1991.5月号~1993.1月号 青土社刊)に連載された「アンの迷走ーモンゴメリと村岡花子」を改稿加筆したもの。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
赤毛のアンの秘密、というべきか或いは作者モンゴメリの秘密というべきか。他人の人生をあれこれと推測だけで論ずるのは多分愚の輪極みなのだろうけど、子どもが、(多くは親に対して)差し出した自らの手を取られないままに育つという事が、その後の人生にどれほどの影響を与えうるか。アンはグリーンゲイブルスで、P.E.Iで幸せを手に入れた。ではモンゴメリは?『赤毛のアン』という物語の裏側に潜むモンゴメリの生々しい人間臭さに気付く。
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書かれてからずいぶんたっているはずですが、面白かったです。その昔中学生だった頃、女子にはアン・シリーズがとても薦められました。自分でも同性で年が近いため、アンに身近なイメージをいだきつつ読み、いかにもその頃の女子中学生が、身近な環境として「素敵」と思い易いような生活環境を楽しみつつ読み、でも、いつも心に浮かんでいた「?」が少し解明したような気がしました。
その頃の疑問は第一に「西洋人の少女はこんなにやたらとしゃべり、こんな発言をするのか?」「それともアンが特別なのか」でした。それから、アンの行動や発言が、素敵でしょ?と提示されているから素敵なのかもしれないけど、何だか自分には今一つしっくりこない、ということでした。でも、その頃の自分は周りに薦められたアンが「これが戦前に育った母の頃とは違う、近頃推薦されるスタンダードなのかなあ」と思い込んでしまったフシがあります。 -
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この本は、『赤毛のアン』の作者、モンゴメリの評伝という形をとって、日本人女性の結婚観や幸福観などについて考案したものです。
『赤毛のアン』既読者の方にオススメ。
【学生図書コーナー A933.7/OG 】 -
『赤毛のアン』ファンにはショッキングな本かも。未読のわたしにはたいへん興味深く、身につまされるものをひしひしと感じた。
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モンゴメリが家庭問題に悩んでいたことをフェミニズム的視点で解釈。日本人女性がなぜこの作品に強い愛着を見せるのかを論じた最終章がとくに興味深い。ただ断定的な口調が多くて、腑に落ちぬ箇所もある。参考文献を詳細に挙げてほしかった。
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長かった〜。うーん、ちょっと難しくて途中で飽きるかも。