アメリカと中国

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000220958

感想・レビュー・書評

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  • 著者は今年で齢85になる、共同通信の元米特派員のジャーナリスト。
    米独立戦争の頃からキッシンジャー訪中にかけての米中関係の歴史を語る。
    米国は中国の儒教の伝統や歴史、一方で中国は米国の経済力、底抜けの誠実さ、民主主義にそれぞれ魅かれながら、歴史の中で絡み合ってきたことが伝わってくる。合わせて理想主義と現実主義が振り子のように振れながら、使い分ける米国の容赦ない外交姿勢も垣間見える。
    今や世界で最も重要と言えるこの2国関係。日米の歴史が相当に浅いものに感じられた。

  • 松尾文夫という名前はどこかで見たことがあると思ったら、『オバマ大統領が広島に献花する日』を書いた人だ。この本は2009年に書かれ、ぼくは読んで、そういうこともあるかと思っていたらそうなった。松尾さんの面目躍如ではないか。その松尾さんの本書は独立戦争でイギリスと袂を分けたアメリが中国と出会うところから、日本の敗戦までをあつかう。松尾さんは共同通信社の記者としてアメリカの特派員、支局長などを長年勤めた人だけに、アメリカのことをよく知っていて、土地勘もあるし、この中で出てくる多くの人にも会っている。だから、歴史的なことを話していたかと思うと、急にアメリカのどこそこへ行ったとかの記述が出てきて、読者に時間を越えた世界を縦横に飛び回っているような気にさせる。ただ、松尾さんはジャーナリストで研究者でないから、英語の資料はかなり読み込んでいるし、中国関係の専門書もかなり読んでいるが、中国語資料はだいたい知人に読んでもらっている。これは仕方ないが、少し叙述にギャップを感じることもある。本書の主題はアメリカと中国のかかわりだが、アメリカは「門戸開放、機会平等」をスローガンに掲げ、遅れて中国へ進出した結果、アヘン戦争ではアヘン厳禁を面に出し中国の好評を得たし、その後も中国革命の中で国民党の蒋介石を援護していったが、裏ではアヘンの密貿易もやったし、どうしようもない国民党の軍隊を見限って、共産党との連合政権構想を出し、最後には蒋介石を裏切るという二つの顔ももっていた。イギリスほどの狡猾さはないものの、なかなかしたたかな国だということが見て取れる。蒋介石は日本に留学し、日本の軍隊の強さを知っていたから、後の共産党の内戦のためになるべく自分の軍隊を温存したがった。しかし、アメリカとしては日本と戦争を始めたあとはなおさら蒋介石軍に頑張ってもらわなくてはならない。だから、あるときは軍の統率権をアメリカに渡すよう求めたほどである。本書は1945年までであるが、現在につながるアメリカと中国の原点がここにみごとに描かれている。

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