あとがきに「夢路いとし喜味こいしは上方しゃべくり漫才の最高峰」とさらっとかいてあるが、まさにそのとおり。
ボクにとってはやはりダイラケ・いとこいは漫才の双璧、龍虎です。
特に、客を絶対にいじらない、清々しいというか孤高の漫才というか、見事で素晴らしかった。
お客と一体で創り上げる、ライブ感のある舞台も良いですが、芸の力で客の意識を嫌でも惹きつける名人芸に魅力を感じます。
お兄さんの夢路いとしさんはかなり前に亡くなられました。
この本は弟の喜味こいしさんのモノローグ。
口調がそのままで、ご本人を彷彿とさせます。
ほぼ、説明的な文章がなく、古いことなど細部が分からないところもありますが、それも全然気になりません。非常に良い編集の仕方だと思います。
編集者(であろう)戸田学さんの上方演芸に対する愛がヒシヒシと伝わってきます。
いとこいさんは、ボクらの記憶ではやはり「がっちり買いまショウ」の名司会。
ボケのいとしさんが目立ってました。「10万円7万円5万円運命の分かれ道」。
同様に日曜日のお昼のテレビ番組(ダイビングクイズ)の司会をしていた若井はんじけんじとともに思い出されます。
軽い調子でボケ倒すいとしさんと比べると、こいしさんは眉毛が太くてがっちりしてて、少し怖そうなおっちゃんという印象でした。
私が実物を拝見したのは、もう、最晩年の舞台。
ご存知、スカルキャップと白い髭を蓄えたダンディな姿で。
あの白い髭はおしゃれかなと思ってたのですが、おそらくかなり痩せてしまっているのをカモフラージュしていたのではないかと思います。
幸運にも梅田芸術劇場の最前列で、娘の喜味家たまごさんとの掛け合いを見たのですが、袖からのぞく腕が異常なほどやせ細っていました。
もしかしたら、かなり辛かったのでしょうかね。
この本もその最晩年の聞き書きなので、ご本人にとっては体力の限界だったのかもしれませんが、記憶力の確かさはすごいです。
本当はこの何倍もの古い貴重な体験、芸談を読みたいところですが、今となってはそれもかなわず。
よくまとまった良書・資料だと思います。
戸田学氏のъ(゚Д゚)グッジョブ!!というべきでしょう。