- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000228770
作品紹介・あらすじ
フランスが革命へと向かう、激動の一八世紀。それは、子どもをとりまく社会環境もまた、大きな変貌を遂げた時代であった。教会、王権、そして革命政府は、学校教育をいかに構想したのであろうか。子どもに向けられる大人たちの視線は、どのように変化したのであろうか。農村教師の日記や、当時好評を博した子ども向け雑誌『子どもの友』、革命期に創られた「愛国少年」の伝説など、興味深い史料を読み解きながら、子ども/家庭/学校をめぐる一八世紀フランスの社会文化史を描く。
感想・レビュー・書評
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近世フランスの教育の実態と理想的な子供の在り方を研究した本。なかなかおもしろかった。
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本書では政府や議会ではなく,生徒や教師,あるいは地域の方により重点が置かれ,表面的な教育「政策」史の理解に血を通わせてくれる.教育の変遷を十分に捉えるには,制度や政策などの歴史の流れの概説だけではなく,このような実態調査―おそらく困難を極める―が不可欠であろう.
【第一章】では,革命期に取りざたされ再び脇へ追いやられることとなる民衆の初等教育に焦点が当てられる.16世紀の宗教改革によってフランス国内でも頭角を現しはじめたプロテスタントの排撃手段の一つとして現れた「小さな学校 petite école」の当時の状況が振り返られる.結局アンシャンレジーム期の政策も,大革命の後と同じく初等教育に真剣に取り組むことはなかった.
【第二章】から【第三章】にかけては,コレージュについて個人的に大変有益な情報が得られた.その起源については簡単に概説されるにとどまるものの,「寄宿舎 pension」の台頭によるコレージュの衰退等,中等教育に顕著に現れる中上流階級の親たちの教育観の変化(ラテン語の排斥,実学の尊重)について,非常に説得力のある説明がなされる.十八世紀が「子供の発見」の世紀であるということが良く理解できる.
【第四章】は著者が最も力を入れた章であるとあとがきに書かれるが,個人的にはそれ以前の章が重要であった.この章だけ趣ががらっと変わり,別のタイトルを手にしている感があったものの,児童文学の比較を通して社会的な子供観と時代との相関性が垣間見られ面白い.
大革命以降の教育史をまともに理解するには,アンシャン・レジーム以前の教育史を知る必要があり,本書はそのために非常に役に立った.