検証 バブル失政――エリートたちはなぜ誤ったのか

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000244794

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  •  1985-1990年「バブル経済」期の金融政策決定過程を検証したノンフィクション。バブル生成の直接要因となった低金利政策、バブル加速の要因となり後に日本の金融システム崩壊のとどめとなるBISによる銀行の自己資本比率規制導入、そしてバブル終焉の引き金となった不動産融資総量規制について、内外の公文書・私文書や日米政策当局者へのインタビュー、オーラルヒストリーなどを駆使して、それぞれの政策決定プロセスを緻密に再現している。1つの優先課題に囚われてマクロな見通しを欠く(バブル生成期には円高対策、バブル末期には地価急騰)日本の政治家の欠陥や、硬直した官僚機構(部署間の力関係の固定化)なども問題だが、やはり何といってもアメリカ政府の「圧力」に左右される国家構造が最大の問題であったことがよくわかる。

  • バブル経済期に日本の金融政策の舵取りをになった日本銀行・大蔵省に着目し、バブル崩壊までの軌跡を描いた。

  • 時事通信の記者による、1980年代のバブル生成、崩壊に至るノンフクション。日銀を中心に綴られている。
    著者は10年以上前に「検証バブル失政」で同時期のノンフィクションを共著で著わし、読んだ記憶がある。
    本書は、ジャーナリストらしく、丁寧な取材に基づき、臨場感溢れる筆致でテンポよく綴られ、真に迫るものがある。
    日本の意思決定は今も実は変わっていないのではないだろうか。
    でも読みながら、なぜ今あの時代のバブルの話なのか、既に語りつくされたことではないのか、という思いを禁じ得なかった。

  • 一日で読み終えた。バブルはアメリカの圧力によって形成された、その中で日銀は翻弄され続けた被害者であって決して悪玉ではないという論旨で書かれた本。巻末の注を見ていると、かなりの資料を集め、当事者にも会って書かれたものであるように思う。一件、ファクトの積み重ねで書かれているように見えて、著者の評価が多分に入り混じっているところに注意が必要である。この本に書かれているのは、著者の評価済みの「事実」であることを見逃して、あたかもこれが真実であるかのように全面的に受け止めるのには注意を要するきがする。とりわけ、当時の日銀、大蔵省関係者が、どこまで本当のことを話しているかは判断が難しいところがあるような気がする。ただ、読み物としては面白い。少なくとも西村吉正「金融行政の敗因」(文春新書)よりは読み応えがある。

  • アメリカの外圧、官僚の無誤謬性指向、政治家のポピュリズム等で、利上げ、総量規制等の対策が遅れた事が、バブルの膨張とクラッシュを招いた。これらは今も変わっていない。
    今はデフレからの脱却が最優先となっているが、そこにバブルの発生が潜んでいないか、過去の経験が活かせるか、注意して見ていく必要がある。

著者プロフィール

軽部 謙介(カルベ ケンスケ)
時事通信社解説委員
1955年生まれ。早稲田大学法学部卒業。時事通信社入社。社会部、福岡支社、那覇支局、経済部、ワシントン特派員、経済部次長、ワシントン支局長、ニューヨーク総局長等を経て、現在、同社解説委員。主な著書に『日米コメ交渉』(中公新書)、『官僚たちのアベノミクス』(岩波新書)など。

「2019年 『政策をみる眼をやしなう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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