- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000245531
作品紹介・あらすじ
舞台はアメリカ南部の小さな町。教会の信徒席で眠る「わたし」を町の住人はピュウ(信徒席)と名づけた。外見からは人種も性別もわからず、自らも語ろうとしないピュウの存在に人々は戸惑う。だが次第に町の隠れた側面が明らかになり……。気鋭の作家、キャサリン・レイシーが人種や性の枠組みを揺さぶる、挑発的な意欲作。
感想・レビュー・書評
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あらすじを知っていたので、俯瞰か町の人の視点で描かれているのだろうと思ったら、何者であるかわからない「ピュウ」の主観の小説だったので驚いた。
分厚く重ねた皮を一枚一枚剥いでいくように、次第に見えてくる町の人々の過去の罪、現在の罪。
心臓が冷たくなるようなことだけれど、「ピュウ」の体を通して読んだからか、読後感には温かさもあった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読了後、本がふせんだらけになりました。
どこから書けばよいのやら…。
偽善的な人が多かったなかで、ありのままのピュウを受け入れることでピュウと言葉を交わした人々に惹かれました。とりわけ印象的だったのがアニー。15歳にして既に、この町が排他的であることに気づいていて不満を募らせている。
自分の意見があり堂々と先生に反論し、その結果学校を早退させられたことについて「ムカついてやろうと思ったけど、うれしすぎて無理だった。」(p166)静かで緊迫した展開が続くなかでここは面白くて好き。
ピュウを質問攻めにしつつも無理やり聞き出そうとしない優しさがあり、寄る辺ないピュウの境遇を思いやって涙するアニー。いい子だのう。
抽象的な表現も多くわかりやすくはないけれど、それだけに理解したくて何度も読み返しました。
「わたしは夜に埋められていた」
「石灰化した悲しみ」
などなど独特の感性を宿す表現が光っていて、言うまでもなくそれは訳者の井上里さんの技量があってこそ。改めて翻訳文学の素晴らしさに感激もひとしおです。
他の作品も読んでみたいけど、今のところ翻訳されているのはこれだけらしい。ぜひまた井上さんの翻訳で読みたいです!
※先日読み終えた『消失する惑星』の訳者が井上さんで(初読み)、前からずっと気になってたのが本書で、もう1冊気になってる『トラスト』も、これまた偶然同じく井上さんでした。そして先日図書館の新刊コーナーで『闇の礎』という面白そうな匂いがぷんぷんする本を見つけました。またもや偶然…以下略…井上里祭り開催決定です。 -
人種も性別も分からないPEWが現れる。
片田舎に暮らす人々は、PEWの存在に戸惑い、付き合い方を掴みあぐねる。
人とはなんなんだろう。アイデンティティーとは何なんだろう。社会、コミュニティーって何なんだろう。
様々に揺さぶられる。 -
名も記憶も会話も無い者の心象が気化する水のように浮かぶ。生贄を片手に我が身は血を流さず清き者であると排他的なコミュニティの人々。黒人、難民、子供。弱者の声にならない恐れと違和感を感覚で綴る無の表現を実感できる本書へ感謝したい。
"訳者あとがき"を最後に拝読し、漠とした私の頭に、著者の意図が具体的にミシシッピ州や南部アメリカを通し世界を可視化する試みであると知りあらためて感動が胸に込みあげた。
内側からの声なき表現。無を描く。途中、度々作者の感性に唸り声をあげては額に手を当てた。知恵熱が出てはしないかと…。読めて嬉しい。 -
ピュウが在ることで、アメリカ南部コミュティの輪郭が浮き上がり、読み手を揺れ動かす。
普通だと思っていたことが、普通じゃなくなる。
現実の捉え方に、ちょっとした転換をもたらす作品。 -
年齢も性別もわからないよそ者の”ピュウ”に、人々は勝手にイメージを作り上げ、勝手に自分の内面を曝け出したり語ったりする。そんなに誰かに曝け出したかったんだ…とこのコミュニティの閉塞感が思いやられる。
最後の方は怒涛のように畳み掛けられて、私は怖かったな。 -
アメリカ南部の(時代はよくわからないが現代)閉鎖的な土地に流れ者のピュウ(教会の椅子だったかな)がやってくる。最後まで何も喋らない。白人でも黒人でも女性でも男性でもない。しかし何故だか人々は勝手に憐み保護する。結構カトリックが厳格な土地で、それほど文化的に活発でないので、理由もなく信心ぶかいのがよし、とされているが。
皆がピュウに口に出すのを憚られる心の吐露を吐き出す。教会に関係なく、そして喋らないから。そして次第にピュウこそが神様なんではないか、という空気に。なんでしょ、今の宗教感がゆがんでるんではないか?というのがテーマ。 -
社会の持っている違和感は感じられたが、もやもやして終わる。
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読みながら、結末はハッキリしないんだろうなーとどこかで思いながらも読み急いでしまった。
“現代”(コンテンポラリー)物語ですね。
物語として読むべきではないかもしれないけど、物語として読むことでしか感じられないこともある気がした。
ゆっくり読まないといけない。
訳者のあとがきで判明したこともあり。
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翻訳本でこの内容だとついていけない。でも日常の描写はよく思い浮かんで好き.年末年始忙しかったからゆっくり時間取れる時に読もう