中世芸能を読む (岩波セミナーブックス 83)

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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000266031

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  • 花の下連歌の場の無縁性。社会から断ち切られた特別の場、無縁の自由空間なわけです。そして無縁の聖たちが主宰する無縁空間の連歌会に参加するためには、世俗にあって有縁の人々である「よろづのもの」は一時的にせよ身分・姓名を隠すことで自己を無縁化する必要があったということです。

    しかも、枝垂れ桜の下には冥界があるという超越的な世界、たた単にフラットな自由な空間がそこに出現しているというのではなくて、その無縁の場を保証するためにはものすごい呪術的なパワーというか、冥界の超越的な力によってそこは一時的に無縁化した空間になるということがある。そういう中で花の下連歌は行われます。花の下連歌はそういう無縁の場であると同時に超越的な世界との接点でもあるような、境界的な場に設定されます。境界的な場に無縁空間が出現する一つの例として枝垂れ桜の花の下というのがあると考えていただければいいわけです。

    実はこれは中世の一揆の問題とかかわってきます。ある種の超越的なパワーを背景として無縁平等の人間集団が形成されるというのが一揆で、しかも一揆の集団と連歌をやる人たちの集団がぴったり重なってくるような事態が中世の後期には現れてきます。

    p121-122

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科教授。世阿弥および能を中心とする日本の中世芸能・中世文学を専門とし、『宴の身体 バサラから世阿弥へ』、『中世芸能講義』等、関連著書多数。全四巻の『能を読む』シリーズの編集委員。財団法人観世文庫の理事も務める。

「2016年 『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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