資本主義の新しい形 (シリーズ現代経済の展望)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000287333

作品紹介・あらすじ

資本主義が「非物質化」の方向へと進化している.この変化の本質を見定めることによって,日本企業の産業競争力の低下,経済格差の拡大,温暖化対策の停滞といった諸問題に真に迫ることができる.日本経済をとりまく課題を理論的かつ包括的にとらえ,進むべき方向としての社会的投資国家のヴィジョンを明確に打ち出した迫力の一冊.

感想・レビュー・書評

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  • 昨今の(ときに安易な)脱成長、アンチ資本主義に一石を投じる。

    日本企業は、モノ生産中心の産業構造からの転換(著者の言葉で言う資本主義の非物質主義的転回)に乗り遅れ、余剰資金を投資どころか配当に回し、蓄積を失った。
    労働力への教育的投資も怠り、今や環境負荷を下げることもできずにいる。

    重要なポイントと思うのは、類書(例えば「人新世の資本論」)などと異なり、この本の著者は、環境破壊や格差拡大は経済成長至上主義が原因という立場をとっていないこと。むしろ、正しい成長路線を採ることでこうした問題の解決に向けて踏み出せるとの立場。

    その具体的な施策のキーワードが、「社会的投資」。もっと言えば人的投資と脱炭素。
    すくなくとも、資本主義の下で成長を目指すと格差が広がるからもう立ち止まって分配しよう、という議論よりはるかに前向きで建設的と私には思えた。

    経済学の理論、データの裏付けのしっかりした骨太さも素晴らしい。

  • https://www.iwanami.co.jp/book/b492584.html
    〈討議〉資本主義の「新しい形」とは何か………石川健治・大澤真幸・宮本太郎・諸富徹
    ・〈宗教としての資本主義〉の現在――そして未来………大澤真幸
    ・社会的投資戦略を超えて――資本主義・福祉・民主政治をむすび直す………宮本太郎
    ・経済成長を通じて平等な社会を築く――資本主義の非物質主義的転回,産業構造転換,社会的投資国家………諸富 徹
    https://www.iwanami.co.jp/book/b524837.html
    https://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/2021/kyouyou/C/syakai/index.html

    2010
    https://www.iwanami.co.jp/book/b226029.html
    2009
    https://www.iwanami.co.jp/book/b257606.html
    2003
    https://www.iwanami.co.jp/book/b257301.html

  • 非物質主義的転回、資本の無形化、モノ生産からサービス生産へ。無形資産を生み出せる人間の知的活動が重要になり、それが促進できる「人的資本投資」が最重要。

    モノづくり、マルクス的資本主義の呪縛からの解放。AIに負ける前の束の間の?

  • 東2法経図・6F開架:332.06A/Mo77s//K

  • 著者:諸富 徹
    定価:本体2,600円+税
    刊行日:2020/01/28
    ISBN:9784000287333
    版型:四六 上製 カバー
    頁数:270
    シリーズ 現代経済の展望

     資本主義が「非物質化」の方向へと進化している。この変化の本質を見定めることによって、日本企業の産業競争力の低下、経済格差の拡大、温暖化対策の停滞といった諸問題に真に迫ることができる。日本経済をとりまく課題を理論的かつ包括的にとらえ、進むべき方向としての社会的投資国家のヴィジョンを明確に打ち出した迫力の一冊。
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b492584.html


    【目次】
    はしがき

    第一章 変貌しつつある資本主義 
    1 資本主義の本質──変わるものと変わらないもの 
      1 資本主義の変わらぬ本質
      2 資本主義の進化としての「非物質化」
      3 企業の競争優位源泉の非物質化
    2 資本主義はどこへ行こうとしているのか 
      1 資本主義は「長期停滞」に入ったのか──サマーズの問題提起
      2 「自然利子率の低下」が意味するもの
      3 なぜ「投資機会の喪失」が起きているのか
    3 長期停滞と日本経済 
      1 日本企業における「利益剰余金(内部留保)」の増加傾向
      2 投資の停滞
      3 分岐点としての二〇〇〇年


    第二章 資本主義の進化としての「非物質主義的転回」 
    1 資本主義の「非物質主義的転回」とは何か 
      1 知識産業、脱工業化、ポスト資本主義
      2 「非物質主義的転回」の定義
      3 資本の非物質化
      4 労働の非物質化
      5 消費の非物質化
    2 経済学における「非物質主義的転回」 
      1 ソローの新古典派成長モデルとその限界
      2 人的資本と内生的成長論──その意義
      3 研究開発とシュンペーター的「創造的破壊」
    3 マクロ経済における資本主義の「非物質化」 
      1 資本主義発展における無形資産投資の重要性
      2 無形資産投資の推計
      3 日本における無形資産投資の停滞
      4 無形資産投資の経済成長・産業構造転換へのインパクト
      5 無形資産投資の経済政策・産業政策上の含意

    第三章 製造業のサービス産業化と日本の将来
    1 日本企業の国際競争力低下 
      1 象徴としての電機産業の凋落
      2 労働生産性と収益率の低下
      3 設備投資の低迷
      4 なぜ無形資産投資の重要性を理解できなかったのか
      5 何のためのICT投資か
    2 資本主義の非物質主義的転回としての「脱炭素化」 
      1 資本主義の死命を制する脱炭素化
      2 新しい投資機会としての脱炭素化
      3 脱炭素化を前に立ち止まる日本
      4 脱炭素化と経済成長は両立する
      5 脱炭素化と産業構造の転換
      6 産業政策上の政策手段としての「カーボンプライシング」
    3 「製造業のサービス産業化」と日本の製造業の将来展望 
      1 製造業のサービス産業化とは何か
      2 製造業のサービス産業化と第四次産業革命/産業のデジタル化
      3 製造業のサービス産業化はどのように進行したのか
      4 「サービスで稼ぐ」製造業

    第四章 資本主義・不平等・経済成長 
    1 現代資本主義と不平等・格差の拡大 
      1 「経済の非物質主義的転回」は何をもたらすのか
      2 不平等と格差の拡大
      3 何が格差拡大を生み出しているのか
      4 人工知能(AI)は格差を拡大させるか
      5 ベーシックインカムより人的資本への投資を 
    2 「公共投資国家」・「福祉国家」から「社会的投資国家」へ 
      1 社会的投資国家とは何か
      2 経済成長戦略としての人的資本投資政策
      3 スウェーデンの良好な経済パフォーマンスの秘密
      4 経済安定化政策としての積極的労働市場政策


    終章 社会的投資国家への転換をどのように進めるべきか
    1 資本主義新時代の経済政策 
    2 人的資本投資の拡充 
      1 少なすぎる民間企業の人的資本投資
      2 日本政府の過少な人的資本投資
      3 「日本版積極的労働市場政策」としての雇用保険制度
      4 権利としての職業教育訓練 
    3 「同一労働・同一賃金」、賃金上昇、マクロ経済政策 
      1 本来の「同一労働・同一賃金」とは何か 
      2 「労働者は守るが、企業は守らない」 
      3 マクロ経済政策でどう合意形成するか 
      4 産業構造転換の促進手段としての同一労働・同一賃金
    4 脱炭素化へ向けた産業構造転換 
      1 「非物質化」と「脱炭素化」の同時達成を 
      2 脱炭素化に向けた産業構造転換の加速 
      3 カーボンプライシングの導入 
      4 日本経済の将来展望



    参考文献
    あとがき

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著者プロフィール

諸富 徹(もろとみ・とおる):1968年生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は財政学・環境経済学。『グローバル・タックスーー国境を超える課税権力』(岩波新書)、『人口減少時代の都市』(中公新書)、『私たちはなぜ税金を納めるのか』(新潮選書)、『資本主義の新しい形 (シリーズ現代経済の展望)』(岩波書店)他著書多数。

「2024年 『税という社会の仕組み』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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